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抗腫瘍免疫を狡猾に回避する

Crafty evasion of antitumor immunity

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
7 Dec 2021 Vol 14, Issue 712
DOI: 10.1126/scisignal.abn5462

LESLIE K. FERRARELLI

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. E-mail: lferrare@aaas.org

J. H. Shin, J. Jeong, S. E. Maher, H. W. Lee, J. Lim, A. L. M. Bothwell, Colon cancer cells acquire immune regulatory molecules from tumor-infiltrating lymphocytes by trogocytosis. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 118, e2110241118 (2021).
CROSSREF  PUBMED  GOOGLE SCHOLAR

T. Saha, C. Dash, R. Jayabalan, S. Khiste, A. Kulkarni, K. Kurmi, J. Mondal, P. K. Majumder, A. Bardia, H. L. Jang, S. Sengupta, Intercellular nanotubes mediate mitochondrial trafficking between cancer and immune cells. Nat. Nanotechnol.; Epub ahead of print (2021).
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2件の研究によって、腫瘍が直接的な接触を介して浸潤性免疫細胞を抑制する方法が明らかに。

要約

増殖し転移するには、腫瘍は免疫系を回避しなければならない。腫瘍細胞が分子を細胞表面に提示したり分泌したりして浸潤性免疫細胞の活性を抑制していることは、多くの研究によってすでに示されている。こうした免疫抑制機構を臨床で標的にすることは、有望だが困難である。腫瘍が免疫応答を侵害する仕組みの全体像をより詳しく知るには分泌型分子シグナル伝達を厳密に振り返るべきであるということを、今回、2件の研究が示している。Shinらは、腫瘍細胞が免疫調節性表面タンパク質を浸潤性免疫細胞から本質的に盗み、それを自身のタンパク質として発現させることができることを明らかにした。共焦点顕微鏡のタイムラプス撮影によって、一部の腫瘍細胞が、比較的にあまり認識されていないトロゴサイトーシスと呼ばれる「細胞をかじる」行動をとることを見出した(一部の免疫細胞種も、一部の細菌や寄生虫と同様に、この行動をとることが知られている)。共培養実験では、トロゴサイトーシス性がん細胞はその後に免疫細胞由来の調節性分子(CD4、CTLA4、PD-1、Tim-3、LAG3など)を発現し、それを受けて、免疫細胞は免疫抑制経路を亢進した。これらの観察結果は、マウス転移モデルと患者由来の結腸直腸がんおよび頭頸部がんの異種移植片を用いてin vivoでも確認された。Sahaらは、腫瘍細胞が免疫細胞の構成要素を直接的に取り込む別の方法を明らかにした。電界放射型走査電子顕微鏡法を用いて、マウスおよびヒト乳がん細胞がナノスケールのチューブ様構造物(「ナノチューブ」)を介して、共培養されたナチュラルキラーT細胞およびCD8+ T細胞に物理的に接続することを観察した。蛍光標識アッセイでは、このナノチューブを介して腫瘍細胞は免疫細胞から物質――具体的にはミトコンドリア――を抽出することが明らかにされた。このようなミトコンドリアの移動によって、腫瘍細胞ではエネルギー産生量が増加し、免疫細胞ではエネルギー産生量が減少した。マウスにおいて、ナノチューブの形成に重要なRac/Rho GTPアーゼシグナル伝達経路タンパク質を遮断すると、免疫チェックポイント薬の有効性が改善され、乳腫瘍および肺腫瘍の増殖が減少した。ナノチューブの形成とナノチューブを介した腫瘍細胞と免疫細胞の間のミトコンドリアの移動は、患者由来の腫瘍移植片でも確認された。いずれの研究も、臨床的に検出され標的とされる可能性のある基本的な分子機構の解明はまだこれからであり、こうした行動が細胞種、タンパク質、または細胞小器官を標的にしているかどうかも未解明である。それでも、これらの知見は、がん免疫療法を考慮するために重要となる腫瘍媒介性免疫抑制のもう1つの様式を明らかにするものである。

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