1つずつ記憶を作る

Making memories, one at a time

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
7 Jun 2022 Vol 15,Issue 737
DOI: 10.1126/scisignal.add3194

WEI WONG

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Y. Shen, M. Zhou, D. Cai, D. A. Filho, G. Fernandes, Y. Cai, A. F. de Sousa, M. Tian, N. Kim, J. Lee, D. Necula, C. Zhou, S. Li, S. Salinas, A. Liu, X. Kang, M. Kamata, A. Lavi, S. Huang, T. Silva, W. Do Heo, A. J. Silva, CCR5 closes the temporal window for memory linking. Nature 606, 146-152 (2022).

A. Terceros, P. Rajasethupathy, An immune molecule segregates memories in time. Nature 606, 38-39 (2022).

ケモカイン受容体CCR5は、記憶を文脈的につなぐことができる期間を制限している。

近い時間内に獲得された複数の記憶は、両方の記憶が同じ又は重複した神経アンサンブル(同じ刺激によって活性化されるニューロン群)によりコードされている場合、互いに関連づけられ、同時に想起されることがある。この現象は「記憶の関連付け(memory linking)」と呼ばれる。ケモカイン受容体CCR5は、記憶の関連付けに必要なニューロンの興奮性を抑制している。そしてShenらは、この受容体とそのリガンドであるCCL5が、2つの記憶の関連付けが可能な時間枠を制限していることを明らかにした(Terceros and Rajasethupathyの論説も参照)。マウスでは文脈的恐怖学習によって背側海馬CA1(dCA1)ニューロンにおけるCcr5及びCcl5 の発現が亢進し、レポーター発現マウスでは記憶アンサンブル細胞におけるCCR5のリガンド依存的活性化が亢進した。予想されるCCR5シグナル伝達の増強が生じる前にCCL5をdCA1ニューロンに注入する、又はCCR5を光遺伝学的に活性化することで、文脈記憶の関連付けは低下した。一方、dCA1ニューロンのCcr5をノックダウンしたマウスでは対照マウスと比べて記憶の関連付けが強く、Ccr5−/−マウスでは記憶の関連付けの時間枠が拡大していた。神経アンサンブル集団が重複している場合に比べ重複していない場合のCcr5の発現は大きく、一方で2つの文脈の曝露の間では、Ccr5−/−マウスは野生型マウスと比べ、Ca2+活性で評価した活動性ニューロン集団の重複が大きかった。中年期マウス(文脈記憶の関連付けが低下している)では幼若マウスと比べ、Ccl5及びCcr5の高い基礎発現が認められ、かつ文脈学習後のCcl5発現が早期に亢進していた。臨床で使用されているCCR5アンタゴニスト・マラビロクを中年期マウスのdCA1ニューロンに注入すると、記憶の関連付けが誘導された。このようにCCR5活性はニューロンの興奮を抑制し、神経アンサンブルの重複および記憶の関連付けを低下させる。

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