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メラノーマを目覚めさせる

Waking up melanoma

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
21 Jun 2022 Vol 15, Issue 739
DOI: 10.1126/scisignal.add5252

AMY E.BAEK

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

M. E. Fane, Y. Chhabra, G. M. Alicea, D. A. Maranto, S. M. Douglass, M. R. Webster, V. W. Rebecca, G. E. Marino, F. Almeida, B. L. Ecker, D. J. Zabransky, L. Hüser, T. Beer, H. Y. Tang, A. Kossenkov, M. Herlyn, D. W. Speicher, W. Xu, X. Xu, E. M. Jaffee, J. A. Aguirre-Ghiso, A. T. Weeraratna, Stromal changes in the aged lung induce an emergence from melanoma dormancy. Nature 606, 396-405 (2022).

休止状態にある肺のメラノーマ細胞は年齢に関連する間質の環境要因によって再活性化が可能である

メラノーマ細胞は、増殖性状態と緩慢な侵襲性状態のあいだで表現型転換し、結果的に増殖と転移を切り替える。皮膚線維芽細胞は、原発腫瘍の表現型転換を促進する可能性があるが、年齢が関連する転移性メラノーマにおける肺線維芽細胞の役割は不明である。原発性メラノーマ腫瘍の増悪と転移性増殖が年齢に伴って増加することを考慮し、Faneらは、この現象における転移性肺線維芽細胞の役割を調べた。高齢マウスに皮内移植されたメラノーマ細胞は、若年マウスに皮内移植されたメラノーマ細胞よりも転移効率が高く、高齢の肺線維芽細胞は若年の肺線維芽細胞よりもメラノーマの増殖を促進したが、高齢の皮膚線維芽細胞は増殖を抑制した。プロテオミクス解析では、非標準WNTアンタゴニストであるsFRP1が高齢のヒト肺線維芽細胞によって分泌されることが示された。WNT5Aは、原発腫瘍において年齢が関連するメラノーマの休止状態に関与していた。マウスにメラノーマ細胞を皮内移植し、単一細胞が肺に播種された時点で、sFRP1中和抗体で処置したところ、転移コロニーの形成と増殖が抑制された。若年マウスでは、増殖性のより低い単一細胞コロニーがより多くみられ、WNT5A量の多さと相関したが、高齢マウスでは、増殖性の高い比較的大きな細胞コロニーがみられ、WNT5A量は少なかった。メラノーマ細胞(shWnt5a dox細胞)のWNT5Aノックダウンをドキシサイクリン(dox)で誘導すると腫瘍の増殖が促進され、メラノーマ細胞の最初の播種性転移のあとにdoxで処置されたマウスでのみ、5週後により大きな転移コロニーが形成された。若年マウスにshWnt5a dox細胞を尾静脈注射すると、dox処置後に肺でのコロニー形成が増加したことから、細胞がいったん播種されると、たとえ若年マウスの肺であっても、Wnt5aのノックダウンが転移性増殖を可能にする十分条件であることが示された。対照的に、WNT5Aの過剰発現をdoxで誘導すると、高齢マウスではコロニー形成が減少したが、より早い段階でWNT5A発現を促進させると、播種が促進された。メラノーマ細胞株における受容体チロシンキナーゼの解析では、AXLとWNT5Aの存在量が休止状態および若年の転移性腫瘍と相関する一方で、MERがWNT5AおよびAXLとは負の関連を示し、複数の増殖マーカーおよび高齢の転移性腫瘍とは正の関連を示すことがわかった。播種性転移後のメラノーマ細胞でMERの過剰発現を誘導すると、より大きな転移コロニーが形成されたが、原発腫瘍からの播種には少量のMERが必要だった。AXLの過剰発現を誘導すると、MER量は減少したが、WNT5A量には影響しなかったことから、AXLがWNT5Aの下流であることが示唆された。播種性転移後にAXLを誘導すると、転移性増殖が減少した。これらの知見は、間質の微小環境によって年齢依存性の表現型転換が促進され、それが肺の転移性メラノーマ細胞を休止状態から目覚めさせ、それによって転移性メラノーマ細胞が活性化されることを示している。

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