STINGを妨げる

Interfering with STING

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
8 Nov 2022 Vol 15, Issue 759
DOI: 10.1126/scisignal.adf6187

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

Y. Liu, P. Xu, S. Rivara, C. Liu, J. Ricci, X. Ren, J. H. Hurley, A. Ablasser, Clathrin-associated AP-1 controls termination of STING signalling. Nature 610, 761-767 (2022).

クラスリンと結合したアダプタータンパク質複合体AP-1は、ゴルジ体でのSTINGシグナル伝達を阻止する

インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)は強力な炎症促進因子であり、I型インターフェロンおよび炎症促進性サイトカインをコードする遺伝子の転写を促進する。STINGは小胞体(ER)内で活性化され、次いでゴルジ体に輸送され、そこでTANK結合キナーゼ1(TBK1)の動員に伴って炎症促進性のSTINGシグナル伝達が開始される。STINGシグナル伝達は最終的にリソソーム分解により終結する。Liuらは、ゴルジ体におけるSTINGシグナル伝達の調節を検討する中で、活性化したSTINGの局在性を分析した。その結果、STINGアゴニストにより刺激された細胞では、リン酸化されたSTING(pSTING)がトランスゴルジ網(TGN)からエンドリソソームに輸送されるにつれて、クラスリン被覆小胞(CCV)内にpSTINGが濃縮されることを明らかにした。CCV内にSTING、pSTINGおよびpTBK1が濃縮されるためには、主要なクラスリン結合性のヘテロ四量体アダプタータンパク質複合体(AP-1)が必要であったが、ERからTGNへのSTINGの輸送は攪乱されなかった。TGNにおける活性化に際して、pSTINGはAP-1のγおよびσ1サブユニットと結合し、STINGとAP-1の結合は、STINGの様々な古典的活性化因子を通して保存されていた。AP-1をノックダウンするとSTINGシグナル伝達が延長し、I型インターフェロン応答は亢進した。STINGの細胞質側領域で、STINGのAP-1への結合およびCCV内での濃縮に必要なコンセンサスモチーフを同定した。このモチーフ内の重要な残基の変異により、STING分解が低下してI型インターフェロンのシグナル伝達が亢進した。また、TBK1のノックダウンによりSTINGとAP-1の結合が低下し、STINGの分解は減少した。このことは、TBK1がSTINGとAP-1の相互作用を促進することを示唆している。STING分解の阻害およびSTINGとAP-1の結合の強化には、TBK1のキナーゼ活性が必要であった。これらの知見は、STINGにより誘導される炎症促進性シグナル伝達を終結させる重要な開始因子を明らかにし、STINGのシグナル伝達をどのように微調整できるかについて洞察をもたらすものである。

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2022年11月8日号

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