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ホモ三量体形成のインターフェイスを阻害する経口活性型低分子TNF阻害薬がマウスの炎症性関節炎を改善する

An orally active, small-molecule TNF inhibitor that disrupts the homotrimerization interface improves inflammatory arthritis in mice

Research Article

SCIENCE SIGNALING
8 Nov 2022 Vol 15, Issue 759
DOI: 10.1126/scisignal.abi8713

Nasir Javaid1,†, Mahesh Chandra Patra1,†, Da-Eun Cho2,†, Maria Batool1,3, Yoongeun Kim2, Gwang Muk Choi2, Moon Suk Kim1, Dae-Hyun Hahm2,4,*, Sangdun Choi1,3,*

  1. 1 Department of Molecular Science and Technology, Ajou University, Suwon 16499, Korea.
  2. 2 Department of Biomedical Sciences, Graduate School, Kyung Hee University, Seoul 02447, Korea.
  3. 3 S&K Therapeutics, Ajou University Campus Plaza 418, 199 Worldcup-ro, Yeongtong-gu, Suwon 16502, Korea.
  4. 4 Department of Physiology, College of Medicine, Kyung Hee University, Seoul 02447, Korea.

* Corresponding author. Email: dhhahm@khu.ac.kr (D.-H.H.), sangdunchoi@ajou.ac.kr (S.C.)

† These authors contributed equally to this work.

TNFの阻害に至る経口経路

炎症性サイトカインTNFの過剰産生は、多くの炎症性疾患を引き起こす。これらの疾患に対する現在の標的療法は、注射を必要とする高価な生物製剤が主である。既存の低分子TNF阻害薬は、毒性が高いか効果が弱いかのいずれかであり、薬としての有用性が限られている。Javaidらは、マウス細胞とヒト細胞においてTNFのホモ三量体形成を阻害することによってTNFシグナル伝達を阻害する無毒性のTNF阻害化合物を同定し、TIM1と名づけた。TIM1またはより強力な誘導体であるTIM1cを経口投与すると、炎症性関節炎のマウスモデルにおいて、FDAに認可されたTNFを標的とする生物製剤エタネルセプトを注射したときと同程度まで症状が改善され、疾患の増悪を遅らせることができた。この化合物は、将来の薬物開発のための有望なリード化合物になる可能性があり、また、毒性がより高いTNF阻害性化合物に取って代わる有用な研究ツールになる可能性もある。

要約

炎症性サイトカインTNFによる過剰なシグナル伝達は、炎症性関節炎(RA)などの複数の自己免疫疾患に関与している。ところが、この疾患や他の疾患の治療に現在使用されている認可された生物製剤とは異なり、TNFの三量体形成を阻害する市販の低分子TNF阻害薬は、細胞毒性を有するか、効果が低い。本稿でわれわれは、TNF阻害分子(TIM)であるTIM1が、in vitroでTNFシグナル伝達を減弱させ、RAマウスモデルの治療に有効であったことを報告する。初期リード化合物であるTIM1は、炎症性のNF-κBおよびMAPKシグナル伝達とcaspase 3およびcaspase 8依存性アポトーシスの誘導を遅延させることによって、TNFで誘導されるヒト細胞およびマウス細胞のアポトーシスを減弱させた。TIM1は、TNFのホモ三量体形成を阻害することによって炎症性サイトカインIL-6およびIL-8の分泌を阻害し、それによってTNFとTNF受容体との会合を阻止した。コラーゲン誘発性多発性関節炎のマウスモデルでは、より強力なTIM1誘導体であるTIM1cが経口投与可能であり、足の腫脹、膝関節病理学の組織学的指標、関節の炎症性浸潤、全体的な関節炎指数を軽減させた。TIM1cの経口投与は、FDAに認可されたTNF受容体デコイであるエタネルセプトの腹腔内注射によって誘発されるのと同様の免疫学的効果を示した。このように、TIM1cはRAや他のTNF依存性全身性炎症疾患を治療するための低分子療法の開発を牽引する有望なリード化合物である。

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