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進化的に保存されたコロニン依存性経路が細胞集団のサイズを規定する
An evolutionarily conserved coronin-dependent pathway defines cell population size
SCIENCE SIGNALING
8 Nov 2022 Vol 15, Issue 759
DOI: 10.1126/scisignal.abo5363
Tohnyui Ndinyanka Fabrice1, Christelle Bianda1, Haiyan Zhang1, Rajesh Jayachandran1, Julie Ruer-Laventie1, Mayumi Mori1, Despina Moshous2, Geoffrey Fucile3, Alexander Schmidt1, Jean Pieters1,*
- 1 Biozentrum, University of Basel, 4056 Basel, Switzerland.
- 2 Pediatric Immunology, Hematology and Rheumatology Unit, Necker-Enfants Malades University Hospital, Assistance Publique-Hôpitaux de Paris and Imagine Institute, INSERM UMR1163, Université de Paris, 75015 Paris, France.
- 3 SIB Swiss Institute of Bioinformatics, sciCORE Computing Center, University of Basel, 4056 Basel, Switzerland.
* Corresponding author. Email: jean.pieters@unibas.ch
コロニンによる群集管理
末梢ナイーブT細胞は、ほぼ一定数に保たれている。Ndinyanka Fabriceらは、タンパク質のコロニン1がT細胞集団の恒常性の調節に関与する経路を明らかにした。コロニン1の存在量はT細胞密度と相関し、脾臓よりリンパ節において高かった。T細胞の密度が閾値未満の場合、コロニン1は、表面接着分子の細胞内保持を介してアポトーシスを抑制した。密度が閾値を超えると、コロニン1の存在量は、接着分子の表面提示とアポトーシスを阻害するには不十分になった。アメーバのキイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)でも、コロニン1ホモログに依存する同様の機構が作動していた。したがって、T細胞とアメーバは、コロニン存在量の細胞密度依存性調節を介して、みずからの集団密度を内在的に感知して調節する。
要約
細胞集団サイズの維持は、多細胞生物が正常に機能するための基本である。今回われわれは、T細胞を適切な集団サイズに到達させて維持するための、細胞内因性の細胞密度感知経路について報告する。この経路は「同族間(kin-to-kin)」、あるいはリンパ節、脾臓、血液などの組織または臓器内の微小環境を占める同一または類似のT細胞集団間で作動した。この経路は、進化的に保存されたタンパク質であるコロニン1の、細胞密度によって変化する存在量に依存し、コロニン1は、細胞集団が閾値密度に達するまで、生存促進性のシグナル伝達を細胞死の阻害と連動させた。密度が閾値以上になると、コロニン1の発現が最大に達して安定した状態を保つことにより、同族細胞間のシグナル伝達を介してアポトーシスが開始され、細胞集団が適切な細胞密度に戻った。この細胞集団サイズ管理経路は、アメーバからヒトまで保存されていたことから、細胞がみずからの相対的な集団サイズを知り、調整するための、コロニン調節性の進化的に保存された機構の存在を示す証拠となる。