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新たなつながり:SLiMの選択性と破壊
New connections: The selectivity and subversion of SLiMs
SCIENCE SIGNALING
10 Jan 2023 Vol 16, Issue 767
DOI: 10.1126/scisignal.adg5283
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org
G. Shi, C. Song, J. Torres Robles, L. Salichos, H. J. Lou, T. T. Lam, M. Gerstein, B. E. Turk, Proteome-wide screening for mitogen-activated protein kinase docking motifs and interactors. Sci. Signal. 16, eabm5518 (2023).
F. Sorgeloos, M. Peeters, Y. Hayashi, F. Borghese, N. Capelli, M. Drappier, T. Cesaro, D. Colau, V. Stroobant, D. Vertommen, G. de Bodt, S. Messe, I. Forné, F. Mueller-Planitz, J.-F. Collet, T. Michiels, A case of convergent evolution: Several viral and bacterial pathogens hijack RSK kinases through a common linear motif. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 119, e2114647119 (2022).
MAPK基質の短い直線的相互作用モチーフ(Short linear interacting motifs:SLiM)が、ドッキングを可能にし、病原体の標的となる。
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)ファミリーのメンバーは、細胞外ストレス(p38、JNKの場合)または増殖誘導シグナル(ERKの場合)に反応して、標的タンパク質のセリンおよびスレオニン残基をリン酸化する。ERKは、一部において、セリン/スレオニンキナーゼであるRSKをリン酸化して活性化することによって、増殖を刺激する。2報の論文により、disorder領域に典型的に認められるアミノ酸3〜12個の配列である短い直線的モチーフ(SLiM)が、これらのキナーゼとその基質が関わるタンパク質-タンパク質相互作用に重要であることが明らかにされている。MAPKは酵母から哺乳類まで進化的に保存されていることから、Shiらは、酵母増殖アッセイを開発し、哺乳類基質においてp38またはJNKへの選択的ドッキングを確実にするSLiM内のアミノ酸と位置を明らかにすることができた。著者らは、このアッセイを用いてp38またはJNKへのドッキングを仲介する、それまで知られていなかったSLiMをヒトプロテオームでスクリーニングし、その後in vitroおよび細胞で検証されたいくつかのJNK標的を明らかした。もう一報の論文では、Sorgeloosらが、異なるウイルスや細菌が産生するタンパク質に共通の配列であるDDVFを有するSLiMが、RSKアイソフォームに存在する、進化的に保存されたKAKLGM配列に結合することを見出した。この相互作用が、RSKを脱リン酸化から保護し、キナーゼを活性コンホメーションで安定化することによって、おそらくRSK基質のリン酸化を持続させ、病原体に利すると考えられる。Sorgeloosらは、宿主タンパク質をハイジャックする病原性因子におけるSLiMの収斂進化のさらなる例が存在するであろうと述べており、それらは、Shiらが開発した酵母増殖アッセイによって発見され、特性が明らかにされる可能性がある。