病原体関連グルーミング

Pathogen-associated grooming

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
7 Feb 2023 Vol 16, Issue 771
DOI: 10.1126/scisignal.adg9431

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

J. Shang, G. Tang, J. Yang, M. Lu, C.-Z. Wang, C. Wang, Sensing of a spore surface protein by a Drosophila chemosensory protein induces behavioral defense against fungal parasitic infections. Curr. Biol. 33, 276-286.e5 (2023).

B. P. Lazzaro, Infection biology: Molecular recognition of fungal spores stimulates host hygiene. Curr. Biol. 33, R61-R84 (2023).

真菌表面タンパク質がハエのグルーミングを誘発する

動物は、異物、寄生生物、病原体を除去するために自発的または定期的に毛づくろい(グルーミング)をする。昆虫の場合も、真菌性匂い物質、胞子、細菌性リポ多糖によってグルーミングが誘発されることがある。Shangらは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)が体表の胞子を検知して除去することを可能にする昆虫病原性真菌メタリジウム・ロベルトシイ(Metarhizium robertsii)由来表層タンパク質(Lazzaroによるcommentary参照)を同定した。Mcdc9を欠損したメタリジウム・ロベルトシイの胞子をキイロショウジョウバエの体表に散布すると、野生型胞子ほど効率的に体表から除去されなかった。真菌Mcdc9の欠損は、胞子をキイロショウジョウバエの体表に散布した場合には真菌宿主の死を遅延させたが、胞子をキイロショウジョウバエの体内に注射した場合の感染性や致死性には影響を与えなかった。酵母ツーハイブリッドスクリーニング法と細菌での異種発現実験によって、キイロショウジョウバエ化学感覚タンパク質CheA75aがMcdc9の受容体候補として同定された。CheA75aをノックダウンさせたキイロショウジョウバエでは、対照キイロショウジョウバエと比べて、メタリジウム・ロベルトシイ野生型胞子を体表から排除する効率が低下し、より迅速に感染に屈した。CheA75aは主に脚と羽で発現し、脚の化学感覚器に精製Mcdc9を散布すると、脚の電気生理学的反応が誘発された。衛生学的なグルーミングを調節する神経回路にCheA75aを関連づける分子機構は同定されていないが、この現象は病原体関連分子パターンを検知する宿主パターン認識受容体による自然免疫応答の誘導を想起させる。

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