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オピオイド離脱の脆弱な状態

The fragile state of opioid withdrawal

Editors' Choice

SCIENCE SIGNALING
14 Feb 2023 Vol 16, Issue 772
DOI: 10.1126/scisignal.adh0620

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

Y. Zhu, P. Yan, R. Wang, J. Lai, H. Tang, X. Xiao, R. Yu, X. Bao, F. Zhu, K. Wang, Y. Lu, J. Dang, C. Zhu, R. Zhang, W. Dang, B. Zhang, Q. Fu, Q. Zhang, C. Kang, Y. Chen, X. Chen, Q. Liang, K. Wang, Opioid-induced fragile-like regulatory T cells contribute to withdrawal. Cell 186, 591-606.e23 (2023).

M. W. Kim, J. Kipnis, Picking a (neuroimmune) fight against fragile regulation of addiction. Cell 186, 464-466 (2023).

オピオイド使用によって誘導される脆弱なTreg細胞が、シナプス弱化と離脱症状を引き起こす。

オピオイドはその嗜癖性のために、鎮痛剤としての有用性が限られている。Zhuらは、オピオイド使用により、脆弱な制御性T(Treg)細胞の集団の形成が誘導され、これらのTreg細胞が血液脳関門(BBB)を通過して離脱症状の一因となることを見出した(KimとKipnisも参照)。脆弱なTreg細胞は転写因子Foxp3が陽性であるが、免疫抑制機能を失っており、その発生はサイトカインのインターフェロン-γ(IFN-γ)によって駆動される。オピオイド使用障害の患者では、Foxp3+ Treg細胞が増殖し、IFN-γのmRNAおよびタンパク質存在量の増加と、低酸素誘導性転写因子をコードするHIF1αの発現増加を示した。マウスではオピオイド投与によって全領域性の低酸素症を生じ、IFN-γ産生と脆弱表現型Treg細胞の発生が促進された。オピオイド投与マウスでは、IFN-γ+ Treg細胞が、嗜癖行動を調節する脳領域である側坐核に浸潤した。短期と長期の両方のモルヒネ投与により、側坐核のニューロンに棘形態が発生し、興奮性シナプス機能の弱化が示唆された。IFN-γ中和抗体の投与またはTreg細胞のIfngの欠失によってこの作用は低下し、離脱症状も軽減された。モルヒネ投与により、ニューロンからのケモカインCCL2の産生が増加し、Treg細胞のCCL2受容体CCR2を欠失させると、側坐核におけるTreg細胞浸潤とシナプス弱化が抑制され、離脱症状が軽減した。モルヒネ投与に伴い、BBBの透過性亢進と、側坐核のアストロサイトにおける脂肪酸結合タンパク質7(Fabp7)の存在量低下も認められた。アストロサイトにFabp7を強制発現させると、BBBのバリア機能が回復し、Treg細胞浸潤が減少した。このように、オピオイド投与により脆弱なTreg細胞の発生と増殖が刺激され、これらのTreg細胞が側坐核に浸潤し、そこで有害なシナプスリモデリングを促進して、オピオイド離脱症状を悪化させる。

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オピオイド離脱の脆弱な状態

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