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パーキンソン病関連タンパク質シナプトタグミン-11のパルミトイル化が、その代謝回転とα-シヌクレインの恒常性とを結びつける

Palmitoylation of the Parkinson’s disease-associated protein synaptotagmin-11 links its turnover to α-synuclein homeostasis

Research Article

SCIENCE SIGNALING
14 Feb 2023 Vol 16, Issue 772
DOI: 10.1126/scisignal.add7220

Gary P. H. Ho*, Erin C. Wilkie, Andrew J. White, Dennis J. Selkoe*

Ann Romney Center for Neurologic Diseases, Department of Neurology, Brigham and Women's Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA 02115 USA.

* Corresponding author. Email: dselkoe@bwh.harvard.edu (D.J.S.); gho@bwh.harvard.edu (G.P.H.H.)

パーキンソン病における病原性のパルミトイル化

シナプトタグミン-11(Syt11)およびα-シヌクレインというタンパク質はいずれも小胞輸送の制御因子であり、パーキンソン病(PD)と関連している。Hoらは、これら2つのタンパク質の間の関連性が、この疾患の特徴的な細胞病態に寄与している可能性があることを見いだした。マウスおよびヒトの脳検体では、Syt11が高頻度でパルミトイル化していた。この修飾は、Syt11の高い安定性および膜の特定部分とSyt11との相互作用を誘導し、さらに、PDにおいてニューロンの喪失を促進する、凝集しやすいα-シヌクレイン単量体の増加を誘導した。これらの影響は、マウスの初代培養ニューロン、並びに健康ドナーと家族性PD患者から採取した細胞由来のニューロンにおいて認められた。これらの知見は、なぜSyt11がこの疾患のリスク増加と関連しているかを説明していると考えられる。-LKF

要約

シナプトタグミン-11は遺伝学的にパーキンソン病(PD)と関連している小胞輸送タンパク質である。同様にα-シヌクレインというタンパク質も小胞輸送を制御し、ニューロンにおけるその異常な凝集がPDの決定的な細胞病理である。これら2つのタンパク質は同じ疾患において機能的に類似していることから、われわれはこれらの関連性の有無を検討した。その結果、Syt11はマウスおよびヒトの脳組織、並びに培養下の皮質ニューロンにおいてパルミトイル化されており、しかもSyt11のこの修飾がニューロンにおけるα-シヌクレインの恒常性を乱していることを見いだした。膜貫通ドメインに隣接する2つのシステイン(Cys39およびCys40)のパルミトイル化は、Syt11を、細胞内膜のジギトニン不溶性部分に局在化させ、エンドリソソーム系による分解から保護した。またニューロンにおけるSyt11のパルミトイル化はその存在量を増加させ、細胞内膜へα-シヌクレインの結合を増強した。それにより生理的なα-シヌクレイン四量体は減少し、さらにその凝集しやすい単量体は増加した。これらの影響は、野生型Syt11の過剰発現により再現されたが、パルミトイル化欠損変異では再現されなかった。これらの知見は、PDではパルミトイル化を介したSyt11量の増加が、病的なα-シヌクレイン凝集を促進する可能性があることを示唆している。

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