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ハダカデバネズミはゾンビを倒す
Naked mole-rats slay zombies
SCIENCE SIGNALING
1 Aug 2023 Vol 16, Issue 796
[DOI: 10.1126/scisignal.adj8555]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
Y. Kawamura, K. Oka, T. Semba, M. Takamori, Y. Sugiura, R. Yamasaki, Y. Suzuki, T. Chujo, M. Nagase, Y. Oiwa, S. Fujioka, S. Homma, Y. Yamamura, S. Miyawaki, M. Narita, T. Fukuda, Y. Sakai, T. Ishimoto, K. Tomizawa, M. Suematsu, T. Yamamoto, H. Bono, H. Okano, K. Miura, Cellular senescence induction leads to progressive cell death via the INK4a-RB pathway in naked mole-rats. EMBO J. 10.15252/embj.2022111133, (2023).
ハダカデバネズミの老化細胞はアポトーシスによって除去される。
老化細胞は、組織を傷害する因子を放出し、さまざまな加齢性疾患やがんの一因となる。これらの細胞においてサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp16INK4Aが活性化すると、網膜芽細胞腫タンパク質(pRb)が活性化したままになり、それによって細胞周期の進行が妨げられ、細胞が非増殖性の状態に固定される。これらの非増殖性、アポトーシス耐性の「ゾンビ」細胞を殺傷する老化細胞除去の治療的使用は、研究が盛んな分野であるが、Kawamuraらの報告では、ハダカデバネズミが老化細胞除去の問題をすでに解決していることが示されている。これらの最長寿げっ歯類の皮膚線維芽細胞をDNA傷害剤で処理すると、p16INK4Aをコードする遺伝子(Ink4a)やその他の老化マーカーをコードする遺伝子の転写が誘導され、これはマウス線維芽細胞で起こることと同様であった。しかし、マウス細胞と異なり、ハダカデバネズミ細胞は、DNA傷害またはp16INK4A過剰発現の後にアポトーシスを起こした。p16INK4Aによって誘導される老化と死滅は、pRBとモノアミン酸化酵素(MAO)の活性に依存し、MAOは、デバネズミの線維芽細胞に存在するがマウス線維芽細胞には存在しない、多量のセロトニンを代謝した。多くの細胞種においてMAO活性により産生されるH2O2はアポトーシスを誘導するのに十分であり、デバネズミ線維芽細胞はH2O2誘導細胞死に高い感受性を示したことから、MAOが老化細胞におけるアポトーシスの促進因子である可能性が高いことが示唆された。ハダカデバネズミの肺では、マウスの肺と比較して、吸入DNA傷害剤の投与によって誘導されるInk4a発現が少なく、老化細胞が少なかったが、ハダカデバネズミにMAO阻害剤を前処理すると、肺におけるInk4a発現と老化細胞の蓄積が増加した。pRbがMAOの蓄積と活性を誘導する機構は依然として不明である。pRbのp16INK4Aを介する活性化は、ほとんどの種において不可逆的な老化を引き起こすが、ハダカデバネズミには生来の老化細胞除去表現型を与え、ゾンビ細胞の傷害作用から保護している。