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アルツハイマー病における神経炎症の抑制

Restraining neuroinflammation in Alzheimer’s disease

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
24 Oct 2023 Vol 16, Issue 808
[DOI: 10.1126/scisignal.adl4458]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

W. Su, J. Saravia, I. Risch, S. Rankin, C. Guy, N. M. Chapman, H. Shi, Y. Sun, A. KC, W. Li, H. Huang, S. A. Lim, H. Hu, Y. Wang, D. Liu, Y. Jiao, P.-C. Chen, H. Soliman, K.-K. Yan, J. Zhang, P. Vogel, X. Liu, G. E. Serrano, T. G. Beach, J. Yu, J. Peng, H. Chi, CXCR6 orchestrates brain CD8+ T cell residency and limits mouse Alzheimer's disease pathology. Nat. Immunol. 24, 1735-1747 (2023).

K. L. Reagin, K. E. Funk, CD8+ T cells pump the brakes on Alzheimer's disease. Nat. Immunol. 24, 1597-1598 (2023).

アルツハイマー病のマウスモデルの脳に動員されたCD8+ T細胞は疾患の病態を制限する。

アルツハイマー病(AD)やその他の神経変性疾患では、ミクログリアと呼ばれる脳内の自然免疫細胞が、神経炎症を引き起こすサイトカインを産生する。さらに、CD8+ T細胞などの適応免疫細胞が脳に動員されるが、それらが保護的な役割を果たすのか、それとも有害な役割を果たすのかについては議論の余地がある(ReaginとFunkによる解説を参照)。Suらは、ADのモデルである5 × FADマウスの脳の単一細胞RNA配列解析を通じて、疾患関連ミクログリアとCD8+ T細胞を同定し、フローサイトメトリー解析により時間の経過とともにそれらが蓄積することが明らかとなった。T細胞が十分にある5 × FADマウスと比較して、CD8+ T細胞が欠損したマウスはアミロイドβ(Aβ)プラークの蓄積と認知障害の増加を示した。5 × FADマウスの脳へのCD8+ T細胞の動員には、ミクログリアによるケモカインCXCL16の産生と、T細胞上でのその同族受容体CXCR6の発現が必要であった。CXCL16の存在量は、後期AD患者の死後脳組織で増加していた。CXCR6欠損の5 × FADマウスは、5 × FADマウスと比較して、脳内のCD8+ T細胞数が減少し、Aβ蓄積が増加し、認知機能が悪化していた。CD8+ T細胞上のCXCR6の発現は、脳内でのCD8+ T細胞の増殖と、組織常在性メモリーT細胞に関連した特徴の獲得に必要であった。5 × FADマウス脳の高解像度共焦点イメージングにより、CD8+ T細胞とAβプラーク近くのミクログリアの共局在が明らかになり、これはAD患者の脳でも観察された。ミクログリアは、5 × FADマウスの脳でCD8+ T細胞の動員が阻害されると炎症誘発性因子をコードする遺伝子の発現増加を示し、in vitroで脳由来CD8+ T細胞と共培養すると炎症性サイトカインの産生が減少した。合わせるとこれらの知見は、CXCL16-CXCR6軸がCD8+ T細胞をADマウスの脳に動員して、ミクログリア機能を抑制し、疾患の病態を軽減することを示唆している。

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アルツハイマー病における神経炎症の抑制

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