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プリン作動性P2Y2受容体により誘導される内皮TRPV4チャネルの活性化が肺虚血-再灌流傷害を媒介している
Purinergic P2Y2 receptor-induced activation of endothelial TRPV4 channels mediates lung ischemia-reperfusion injury
SCIENCE SIGNALING
24 Oct 2023 Vol 16, Issue 808
[DOI: 10.1126/scisignal.adg1553]
Maniselvan Kuppusamy1, Huy Q. Ta2, Hannah N. Davenport1, Abhishek Bazaz1, Astha Kulshrestha1, Zdravka Daneva1, Yen-Lin Chen1, Philip W. Carrott2, Victor E. Laubach2, Swapnil K. Sonkusare1, 3, *
- 1 Robert M. Berne Cardiovascular Research Center, University of Virginia, Charlottesville, VA 22908, USA.
- 2 Department of Surgery, University of Virginia, Charlottesville, VA 22908, USA.
- 3 Department of Molecular Physiology and Biological Physics, University of Virginia, Charlottesville, VA 22908, USA.
* Corresponding author. Email: swapnil.sonkusare@virginia.edu
Editor's summary
肺移植では、ドナーから臓器を取り出してレシピエントに移植することの自然のなりゆきである虚血/再灌流によって傷害と機能不全が引き起こされるため、これが移植を制限している。Kuppusamyらは、内皮細胞のカチオンチャネルTRPV4の活性化を必要とする、肺の虚血/再灌流傷害を媒介している経路を明らかにした。虚血/再灌流傷害が生じると、内皮細胞の孔径の大きなPanx1チャネルを介してATPが放出され、細胞外ATPがプリン作動性P2Y2受容体を活性化し、結果的にTRPV4を刺激した。虚血/再灌流傷害のマウスモデルにおいて、内皮細胞のPanx1、プリン作動性P2Y2受容体、またはTRPV4を欠失させたとき、肺の水腫、炎症および機能傷害が抑制された。これらの結果から、肺移植の臨床的成功率を高めるために標的となりえる経路が明らかにされた。—Wei Wong
要約
炎症、血管透過性および肺水腫を特徴とする肺虚血再灌流傷害(IRI)は、肺移植後に生じる原発性移植片機能不全の主な原因である。本稿でわれわれは、IR後の肺水腫および肺機能障害に中心的な役割を果たしている、肺IRにより誘発される内皮TRPV4チャネル活性化の根底にある細胞機構を調べた。左肺門を結紮したIRIマウスモデルを用い、肺IRIによって、内皮細胞(EC)膜のパネキシン1(Panx1)チャネルを介したATP流出が増加することを見いだした。細胞外ATPの増加は、プリン作動性P2Y2受容体(P2Y2R)シグナル伝達の下流に位置する内皮TRPV4チャネルを通じてCa2+流入を活性化した。ex vivoおよびin vitroのIRモデルでは、ヒトおよびマウス肺微小血管内皮においてもP2Y2R依存性のTRPV4チャネル活性化が認められた。マウスにおいて内皮特異的にP2Y2R、TRPV4またはPanx1を欠失させたとき、肺IRI誘導性の内皮TRPV4チャネル活性化、並びに肺の水腫、炎症および機能障害が著明に抑制された。これらの結果から、肺におけるIRIの病理学的後遺症のメディエーターとしての内皮P2Y2Rが確認され、さらに、内皮のPanx1-P2Y2R-TRPV4シグナル伝達経路を阻害することが、移植後の肺IRIを予防するための有望な治療戦略になる可能性が示された。