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睡眠と寿命はグリアと関係

Sleep and longevity tied to glia

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
31 Oct 2023 Vol 16, Issue 809
[DOI: 10.1126/scisignal.adl5530]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

W. Xu, J. Rustenhoven, C. A. Nelson, T. Dykstra, A. Ferreiro, Z. Papadopoulos, C.-A. D. Burnham, G. Dantas, D. H. Fremont, J. Kipnis, A novel immune modulator IM33 mediates a glia-gut-neuronal axis that controls lifespan. Neuron 111, 3244-3254.e8 (2023).

睡眠と健康な加齢を支持する脳-腸間の双方向的シグナル伝達を、グリアが媒介している。

健康の中心的な調節因子として腸-脳軸の認識が高まっている。腸内細菌叢の組成の変化(いわゆる「ディスバイオシス」)、脳内の炎症、および睡眠の断片化は、寿命の短縮と関連している。Xuらはハエを用い、これらの事象と脳-腸間のシグナル伝達ループとを関連付けた。老いたハエの頭部では若いハエと比べ、抗菌作用をもつグリア由来免疫調節因子のIM33をコードする、im33 遺伝子の発現が亢進していた。また、高齢マウスの脳の髄膜層と腸管では、哺乳類のIM33ホモログである白血球プロテアーゼインヒビターSLPIのタンパク質存在量が増加していた。ハエにおいて(全体でもニューロン特異的でもなく)グリア特異的にIM33をノックダウンすると、発生期か成体期かにかかわらず、日中の睡眠障害が引き起こされ、寿命が短縮し、腸管内の活性酸素種(ROS)および乳酸菌(Lactobacillus、主としてL. plantarum)の量も増加した。これらの影響は、グリア特異的なIM33発現の回復により、またはハエにROSスカベンジャーあるいは抗生物質を給餌することで消失した。腸管にL. plantarumを導入すると、睡眠の断片化、寿命の短縮、および脳内の睡眠と概日時計関連遺伝子の発現が低下したが、その他の乳酸菌種の導入ではこれらは認められなかった。L. plantarumにより分泌されるペプチドグリカンの一種は、脳内のインスリン産生細胞を活性化した。これらの細胞のペプチドグリカン受容体をノックダウンすると、睡眠の断片化および寿命に対する腸ディスバイオシスの影響が解消された。これらの知見は、加齢脳内ではIM33(およびおそらくその哺乳類ホモログであるSLPI)が誘導され、腸-脳間の相互的なシグナル伝達ループにおける腸の恒常性と睡眠制御を通じて、健康な加齢が促進されることを示唆している。

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睡眠と寿命はグリアと関係

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