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IL-2を打ち負かす
Cleanup on IL-2
SCIENCE SIGNALING
7 May 2024 Vol 17, Issue 835
[DOI: 10.1126/scisignal.adq1964]
Amy E. Baek
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: abaek@aaas.org
M. Morotti, A. J. Grimm, H. C. Hope, M. Arnaud, M. Desbuisson, N. Rayroux, D. Barras, M. Masid, B. Murgues, B. S. Chap, M. Ongaro, I. A. Rota, C. Ronet, A. Minasyan, J. Chiffelle, S. B. Lacher, S. Bobisse, C. Murgues, E. Ghisoni, K. Ouchen, R. B. Mjahed, F. Benedetti, N. Abdellaoui, R. Turrini, P. O. Gannon, K. Zaman, P. Mathevet, L. Lelievre, I. Crespo, M. Conrad, G. Verdeil, L. E. Kandalaft, J. Dagher, J. Corria-Osorio, M. A. Doucey, P. C. Ho, A. Harari, N. Vannini, J. P. Böttcher, D. Dangaj Laniti, G. Coukos, PGE2 inhibits TIL expansion by disrupting IL-2 signalling and mitochondrial function. Nature (2024).
腫瘍微小環境のプロスタグランジンはIL-2に誘導されるキラーT細胞の増殖を遮断する。
サイトカインであるインターロイキン2(IL-2)は、多様ながんの治療において養子免疫細胞療法(ACT)の鍵となる細胞傷害性CD8+腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の増殖と機能を促進する。だが、腫瘍微小環境の因子がIL-2に対する応答を阻害している可能性がある。Morottiらは、TIL-ACT療法を受けた患者から採取したメラノーマ(黒色腫)検体の単一細胞RNAシーケンシングを用いて、IL-2シグナル伝達が免疫抑制プロスタグランジンE2(PGE2)の産生に関連する遺伝子の発現と相関することを明らかにした。外因性PGE2は生体外においてIL-2に駆動されるTILの増殖を抑制したが、この作用はPGE2受容体EP2/EP4の阻害によって遮断された。刺激を受けていないT細胞および抗原による反復刺激を受けた(RA)T細胞のRNAシーケンシングと、増殖したPGE2に曝露されたCD8+ TILのメタボローム解析では、PGE2によって脂質代謝、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレスが増大されることが示された。PGE2曝露は、ミトコンドリア機能にとって重要であるmTORシグナル伝達を抑制した。mTORアクチベーター(活性化因子)で処理すると、PGE2曝露RA T細胞において、IL-2に駆動されるmTOR標的遺伝子の発現が回復した。IL-2にEP2/EP4の遮断またはプロスタグランジンの合成を触媒するシクロオキシゲナーゼ(COX)の遮断を組み合わせると、IL-2単独で処理した場合に比べて、PGE2量が減少し、TILの増殖効率が高まった。腫瘍断片をpan-COX阻害薬で処理すると、IL-2受容体IL-2Rγcの表面発現が増加し、培養中の増殖能を有する前駆体様TILが増加した。これらの知見は、PGE2が細胞障害性T細胞機能の重要な支柱に干渉することによって免疫抑制腫瘍微小環境を促進することを実証するものであり、TIL-ACT療法を改善するための戦略にとって有用な情報となりうる。