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マウス大脳皮質においてアクチン結合タンパク質CAP1がMRTF-SRF依存性の遺伝子発現を抑制している
The actin-binding protein CAP1 represses MRTF-SRF-dependent gene expression in mouse cerebral cortex
SCIENCE SIGNALING
7 May 2024 Vol 17, Issue 835
[DOI: 10.1126/scisignal.adj0032]
Sharof Khudayberdiev1, 2, *, Kerstin Weiss1, Anika Heinze1, Dalila Colombaretti1, Nathan Trausch1, Uwe Linne3, Marco B. Rust1, 2, *
- 1 Molecular Neurobiology Group, Institute of Physiological Chemistry, Philipps-University of Marburg, 35032 Marburg, Germany.
- 2 Center for Mind, Brain and Behavior (CMBB), University of Marburg and Justus-Liebig-University Giessen, Hans-Meerwein-Strasse 6, 35032 Marburg, Germany.
- 3 Department of Chemistry, Philipps-University Marburg, 35032 Marburg, Germany.
* Corresponding author. Email: rust@uni-marburg.de (M.B.R.); khudaybe@staff.uni-marburg.de (S.K.)
Editor's summary
転写因子SRFとその補助因子MRTFは、ニューロンの形態の変化を媒介する細胞骨格のダイナミクスを誘導し、それにより脳内の神経回路の形成と維持を誘導している。Khudayberdievらは、マウス皮質ニューロンにおけるMRTF-SRFシグナル伝達が、シクラーゼ結合タンパク質CAP1により調節されていることを見いだした。Cap1ノックアウトマウスの大脳皮質および単離した皮質ニューロンを分析したところ、CAP1はアクチン細胞骨格と結合していること、および細胞質中のアクチン単量体の量を増加させていることが明らかとなった。これらのアクチン単量体は細胞質中でMRTFと結合してこれを隔離し、それによりMRTF依存性のSRF転写活性を低下させていた。さらなる探索のためのマルチオミクス的リソースを含むこれらの知見は、ニューロンの発生および機能における細胞骨格関連シグナル伝達の調節に対して洞察をもたらすものである。—Leslie K. Ferrarelli
要約
血清応答因子(SRF)は、脳の発達と機能に不可欠な転写因子である。本稿でわれわれは、SRFの補助因子であるアクチン単量体感知性ミオカルディン関連転写因子MRTFが、マウス皮質ニューロンにおいてどのように調節されているかを調べた。その結果、MRTFに依存したSRF活性はin vitroおよびin vivoにおいて、シクラーゼ結合タンパク質CAP1により抑制されることを見いだした。アクチン結合タンパク質CAP1の不活性化により細胞質中のアクチン単量体の量が減少し、これによりMRTFの核内移行およびMRTF-SRF活性が亢進した。このような機能はコフィリン1およびアクチン脱重合因子には依存せず、皮質ニューロンにおけるCAP1機能の喪失は内因性CAP2により補償されなかった。野生型およびCap1ノックアウトマウスから調製した大脳皮質ライセートのトランスクリプトミクスおよびプロテオミクス解析を行ったところ、in vivoのMRTF-SRF依存性シグナル伝達抑制におけるCAP1の役割が裏付けられた。さらにバイオインフォマティクス解析から、トランスクリプトミクスおよびプロテオミクス解析の結果に一致した、MRTF-SRF標的遺伝子候補が同定された。軸索の成長円錐の機能および興奮性シナプスの形態と可塑性におけるCAP1の関連性を明らかにした、これまでのわれわれの研究と合わせ、今回の研究の知見から、神経回路網の形成に関連する脳内の重要なアクチン制御因子としてCAP1が確立された。