ナノボディの薬理作用

Nanobody pharmacology

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SCIENCE SIGNALING
21 May 2024 Vol 17, Issue 837
[DOI: 10.1126/scisignal.adq4734]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: jfoley@aaas.org

M. A. Skiba, S. M. Sterling, S. Rawson, S. Zhang, H. Xu, H. Jiang, G. R. Nemeth, M. S. A. Gilman, J. D. Hurley, P. Shen, D. P. Staus, J. Kim, C. McMahon, M. K. Lehtinen, H. A. Rockman, P. Barth, L. M. Wingler, A. C. Kruse, Antibodies expand the scope of angiotensin receptor pharmacology. Nat. Chem. Biol. (2024).

抗体フラグメントが薬理学的ツールとして働きGタンパク質共役受容体の機能を調節することができる。

Gタンパク質共役受容体(GPCR)が幅広い生理学的プロセスの媒介に働いていることを踏まえ、多くの低分子とペプチドを使ってこれを治療標的とし、そのシグナル伝達を阻害または刺激している。とはいえ、そのようなリガンドは1つの受容体サブタイプに含まれる、あるいは組織特異的な様式で、GPCRを標的とできないことが多いため、Skibaらは、アンジオテンシンII 1型受容体(AT1R)のシグナル伝達を調節しうるリガンドとして、抗体を用いることを検討した。AT1Rは、ペプチドであるアンジオテンシンII(AngII)に応答して心血管系機能と腎機能の両方を制御しており、高血圧の治療標的である。しかし、AT1Rを標的とする薬物は胎児にオン・ターゲット毒性を引き起こすため、妊娠中は使用できない。著者らは以前、AT1Rのアンタゴニストとなる重鎖のみの抗体(ナノボディ)を報告していた。本稿で著者らは変異導入研究により、高親和性のヒト化AT1Rナノボディの変異体を遺伝子組換えにより作成し、特異的結合性が高く、非特異的結合性が低く、薬物動態が改善されたナノボディをスクリーニングした。これにより、AT1Rと高親和性で結合し、細胞内の受容体依存性Gタンパク質活性化に拮抗し、妊娠マウスにおいてAngII誘発性の血圧上昇を抑制する、ナノボディFc融合二量体タンパク質を作製した。さらにこのナノボディは胎盤を通過できないことから、胎児に変化をきたすことはなかった。予想外なことに、組換えナノボディはその親化合物のナノボディと異なり、低分子受容体アンタゴニストのオルメサルタンを置換することなくAT1Rと結合した。ナノボディ-AT1R複合体を構造解析したところ、ナノボディは受容体の細胞外ループと結合し、その際、ペプチドアゴニストの結合を模倣して、活性型様の立体構造をとって受容体を安定化していることが明らかにされた。このような相互作用がみられたのにもかかわらず、ナノボディの結合は、Gタンパク質またはβ-アレスチンの活性化に必要な、受容体の細胞内側のコアを介したコンフォメーション変化を誘導しなかった。さらに、ナノボディはAT1R結合についてペプチドリガンドと競合する一方で、ナノボディがもつアロステリック効果のため、分子アンタゴニストはまだ様々な程度で受容体に結合することができた。まとめるとこれらの知見は、ナノボディが、より古典的なリガンドとは異なる方法でGPCR機能を調節する薬理学的ツールとして機能しうることを示している。

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