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タウリンで食欲を抑制する

Suppressing appetite with taurine

Editors' Choice

SCIENCE SIGNALING
17 Sep 2024 Vol 17, Issue 854
[DOI: 10.1126/scisignal.adt0770]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

W. Wei, X. Lyu, A. L. Markhard, S. Fu, R. E. Mardjuki, P. E. Cavanagh, X. Zeng, J. Rajniak, N. Lu, S. Xiao, M. Zhao, M. D. Moya-Garzon, S. D. Truong, J. C. Chou, L. W. Wat, S. Chidambaranathan-Reghupaty, L. Coassolo, D. Xu, F. Shen, W. Huang, C. B. Ramirez, C. Jang, L. Li, K. J. Svensson, M. A. Fischbach, J. Z. Long, PTER is a N-acetyltaurine hydrolase that regulates feeding and obesity. Nature 633, 182-188 (2024).

タウリン代謝産物N-アセチルタウリンは食物摂取量を減少させることによって食餌誘導性肥満からマウスを保護する。

タウリンの減少は代謝機能障害に関連し、運動は循環血液中のタウリンとその代謝産物、なかでもN-アセチルタウリンの量を増加させる。Weiらは、マウスにおけるN-アセチルタウリンの生合成、分解、機能を調べた。ホスホトリエステラーゼ関連タンパク質(PTER)は、マウス腎臓抽出物のN-アセチルタウリン加水分解活性を担い、培養ヒト細胞によるN-アセチルタウリン加水分解に必要であった。PTER欠損マウスでは、野生型マウスに比べて、様々な組織でN-アセチルタウリン量が増加し、運動後のN-アセチルタウリン増加量が増大した。PTERの遺伝子多型は早発性の病的肥満に関連することから、著者らはPTERが肥満マウスの体重に影響するかどうかを検証した。高脂肪食(HFD)を与えられた場合、PTER欠損マウスは野生型マウスに比べて、食物摂取量がわずかに減少したが、体重の違いはほとんど認められなかった。一方、同マウスに追加でタウリンを補充した場合やトレッドミルで運動させた場合には、PTERノックアウトマウスでは野生型対照マウスに比べて、大幅に体重が減少し、肥満が軽減し、耐糖能とインスリン感受性が改善された。毎日N-アセチルタウリンを腹腔内注射すると、肥満していないマウスとHFDマウスの両方で食物摂取量と体重が減少したが、その効果はHFDマウスのほうが顕著であった。N-アセチルタウリンのこのような作用は、食欲抑制受容体GFRALを発現する脳幹ニューロンに依存した。著者らは、N-アセチルタウリン生合成機構の候補として、アセチルCoAとタウリンの非酵素的反応、腸内微生物の活動、タウリンおよびアセチル基供与体となる酢酸と一緒に供給された場合のPTERの「逆」作用の3つを同定した。PTERは、酢酸存在下での腎臓抽出物、肝臓抽出物によるタウリンからN-アセチルタウリンへの変換に必要であったことから、in vivoにおいてPTERがN-アセチルタウリンの生合成と加水分解の両方を触媒する可能性が示された。まとめると、これらの知見は、N-アセチルタウリンが食欲を抑制することによって食餌誘発性肥満からマウスを保護することを実証し、この食欲抑制性代謝産物のin vivoにおける産生機構の候補をいくつか提示するものである。

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