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リピートRNAのがんリスク
The cancer risk of repeat RNAs
SCIENCE SIGNALING
5 Nov 2024 Vol 17, Issue 861
[DOI: 10.1126/scisignal.adu2651]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: wwong@aaas.org
E. You, P. Danaher, C. Lu, S. Sun, L. Zou, I. E. Phillips, A. S. Rojas, N. I. Ho, Y. Song, M. J. Raabe, K. H. Xu, P. M. Richieri, H. Li, N. Aston, R. L. Porter, B. K. Patel, L. T. Nieman, N. Schurman, B. M. Hudson, K. North, S. E. Church, V. Deshpande, A. S. Liss, T. K. Kim, Y. Cui, Y. Kim, B. D. Greenbaum, M. J. Aryee, D. T. Ting, Disruption of cellular plasticity by repeat RNAs in human pancreatic cancer. Cell, 10.1016/j.cell.2024.09.024 (2024).
リピートRNAは、膵がんにおいて腫瘍細胞とがん関連線維芽細胞を再プログラムする。
がんにおいては、ゲノム内の反復配列から生じるリピートRNAの発現増加が認められる場合が多い。Youらは、死亡に至ることが多い侵襲性の強いがんである膵管腺がん(PDAC)において、リピートRNAが腫瘍細胞とがん関連線維芽細胞(CAF)に異なる作用を及ぼすことを見出した。長鎖散在反復配列1(LINE-1)レトロトランスポゾンオープンリーディングフレーム1(ORF1)などのリピートRNAを対象にした、ヒトPDAC原発腫瘍の単一分子イメージングでは、PDACがん細胞でリピートRNAの発現がもっとも高く、LINE-1 ORF1の発現は、上皮遺伝子の発現低下および炎症遺伝子の発現増加と相関することが示された。さらに、LINE-1 ORF1の発現は、PDACがん細胞に近接するCAFでもっとも高かった。リピートRNAは細胞外小胞(EV)に移行することができ、患者由来PDAC細胞株から単離したEVは、PDAC細胞とCAFにおいてI型インターフェロン応答(ウイルス感染によって誘導される応答を想起させる)を誘導した。CAF細胞株では、リピートRNAのトランスフェクションにより、筋線維芽細胞性のCAF(myCAF)よりも炎症性CAF(iCAF)に典型的な遺伝子発現パターンが誘導され、myCAFに典型的な遊走および収縮活性が低下した。PDAC細胞株では、リピートRNAのトランスフェクションにより、インターフェロン活性化遺伝子(ISG)および上皮間葉転換(EMT)に関連する遺伝子の発現が増加し、遊走も増強された。これらの作用は、トランスフェクトしたCAF細胞株の培養上清をPDAC細胞株に投与することによって再現された。抗ウイルス免疫応答中に活性化される転写因子IRF3は、PDAC細胞株とCAF細胞株の両方でリピートRNA発現による効果に必要であったが、細胞種特異的なシグナル伝達ダイナミクスと遺伝子シグネチャーに関連していた。これらの結果は、リピートRNAがPDACにおいて腫瘍細胞とCAFに異なる作用を及ぼす仕組みを明らかにしている。