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HIF-2αによるTH2細胞の誘導
HIF-2α drives TH2 cells
SCIENCE SIGNALING
17 Dec 2024 Vol 17, Issue 867
[DOI: 10.1126/scisignal.adv2653]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: jfoley@aaas.org
X. Zou, K. Wang, Y. Deng, P. Guan, Q. Pu, Y. Wang, J. Mou, Y. Du, X. Lou, S. Wang, N. Jiang, S. Zhou, H. Wang, D. Du, X. Liu, H. Hu, H. Zhang, Hypoxia-inducible factor 2α promotes pathogenic polarization of stem-like Th2 cells via modulation of phospholipid metabolism. Immunity 57, 2808-2826.e6 (2024).
S. Giri, A. C. Poholek, Gasping for air: HIF2α in asthma. Immunity 57, 2710-2712 (2024).
マウスではHIF-2αの阻害により、喘息を促進するヘルパーT細胞の発生と機能が抑制される。
2型ヘルパーT細胞(TH2細胞)は、種々の感染に応答するのみでなく、アレルギー性喘息および気道炎症も誘導するCD4+ T細胞のサブセットである。この細胞の発生と機能の理解を深めることは、より良い治療薬の設計に役立つと考えられる(GiriとPoholekのcommentary参照)。Zouらは、喘息患者由来の肺試料の転写解析を通じて、低酸素誘導因子2α(HIF-2α)をコードするEPAS1の発現がTH2細胞において亢進していることを明らかにした。マウス喘息モデルの単一細胞RNAシーケンシング解析からも、同様の発現パターンが認められた。マウスのCD4+ T細胞で特異的にHIF-2αをノックアウトするとTH2細胞の分化が障害され、TH2細胞依存性喘息のモデルにおいて重症度が軽減した。これらの結果は、肺および気管支肺胞洗浄液中のTH2細胞数および2型サイトカインの存在量の減少を伴っていた。肺細胞の分化経路解析から、幹細胞様の起源細胞集団に由来する病原性のTH2細胞サブセットの発生には、HIF-2αが不可欠であることが明らかとなった。転写解析からは、HIF-2αおよび転写因子GATA3の発現にはフィードバック制御が働いており、このフィードバックがTH2細胞の発生と機能にきわめて重要であることが明らかとなった。両因子がIPMK酵素の産生を調整し、それによりホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PIP3)の生成およびホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)-Akt経路の活性化が生じた。TH2細胞ではHIF-2αの欠損によりAkt活性化が低下したが、その他のT細胞サブセットではそのような影響は認められなかった。マウス喘息モデルにHIF-2α阻害薬PT-2385を投与すると、TH2細胞の発生が阻害され、気道炎症が軽減した。まとめるとこれらの知見は、マウスではHIF-2αにより、気道炎症を促進する病原性のTH2細胞の発生が誘導されることを示し、治療的にHIF-2αを標的とすることでアレルギー性喘息を治療できる可能性を示唆している。