甘党を鈍らせる

Dulling the sweet tooth

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SCIENCE SIGNALING
25 Feb 2025 Vol 18, Issue 875
DOI: 10.1126/scisignal.adw8586

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: avanhook@aaas.org

T. Zhang, W. Wang, J. Li, X. Ye, Z. Wang, S. Cui, S. Shen, X. Liang, Y. Q. Chen, S. Zhu, Free fatty acid receptor 4 modulates dietary sugar preference via the gut microbiota. Nat. Microbiol. 10, 348-361 (2025).

C. Fayt, N. Morales-Puerto, A. Everard, A gut microorganism turns the dial on sugar intake. Nat. Microbiol. 10, 270-271 (2025).

糖尿病で減少する腸内細菌は、糖への食欲を鈍らせる代謝物を産生している

視床下部は肝臓と消化器系からの入力を統合して、食欲と食物の嗜好を調節している。甘いもの好きは肥満や2型糖尿病につながる可能性があり、これらの状態はいずれも腸内細菌叢の変化と関連する。遊離脂肪酸受容体4(FFAR4)は食物の嗜好に影響し、さらに腸内分泌細胞を刺激してペプチドホルモンGLP-1を分泌させることでインスリン放出を増大させることから、糖代謝との関連が示唆されている(Faytらの論説参照)。Zhangらは、FFAR4の発現が甘いものへの嗜好と負の相関をもつこと、さらに糖尿病患者におけるその発現は健常対照者と比較して低減していることを見いだした。1型および2型糖尿病のマウスモデルではFfar4の発現が低減しており、腸上皮のFfar4を欠損させたマウスは、ただの水よりも砂糖水を好むようになった。このような糖を求める行動は腸内細菌、特にBacteroides vulgatusの減少に依存していた。この細菌量の減少は、糖尿病マウスおよび糖尿病罹患者の両方で認められた。著者らは、糖尿病マウスとFfar4ノックアウトマウスにおいて糖の嗜好および空腹時血糖値の両方を低下させるB. Vulgatusの代謝物として、パントテン酸(ビタミンB5)を同定した。パントテン酸の摂取はGLP-1の放出を促進し、ヘパトカインFGF21の分泌の増大をもたらし、FGF21は視床下部に作用してFfar4ノックアウトマウスの糖への嗜好を元に戻した。この腸-肝臓‐脳軸に関するさらなる研究により、甘いものへの食欲を抑えることで代謝性疾患を治療するための潜在的な標的が得られるかもしれない。

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