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胃がんを解明する
Making sense of gastric cancer
SCIENCE SIGNALING
4 Mar 2025 Vol 18, Issue 876
DOI: 10.1126/scisignal.adx0607
Amy E. Baek
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org
X. Zhi, F. Wu, J. Qian, Y. Ochiai, G. Lian, E. Malagola, B. Zheng, R. Tu, Y. Zeng, H. Kobayashi, Z. Xia, R. Wang, Y. Peng, Q. Shi, D. Chen, S. W. Ryeom, T. C. Wang, Nociceptive neurons promote gastric tumour progression via a CGRP-RAMP1 axis. Nature 10.1038/s41586-025-08591-1 (2025).
ペプチド作動性侵害受容器がニューロペプチドCGRPの放出を介して胃がんを促進する。
末梢神経系は、自律神経細胞と感覚神経細胞から構成されており、腫瘍の増悪に関与しうる。感覚神経細胞を含む迷走神経の外科的除去によって、胃腫瘍の増殖を抑制できる可能性がある。Zhiらは、多発性胃がん(GC)マウスモデルの神経支配プロファイルを用いて、GCの促進における末梢侵害受容ニューロンの役割を調べた。マウスの同所性胃腫瘍は、ニューロペプチドの一種であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を発現する侵害受容ニューロンによって神経支配されていた。GCマウスモデルでは、CGRP+感覚神経の伸長には成長因子NGFが必要だった。腫瘍成長は、侵害受容ニューロンを活性化させると促進されたが、CGRPアンタゴニストであるリメゲパントによる処置、または腫瘍細胞のCGRP受容体Ramp1のノックアウトによって阻害された。また、CGRPは腫瘍細胞が培養液中でスフェロイドを形成する能力を促進したが、リメゲパントの存在下ではその成長は阻害された。自発性GC転移モデルでは、侵害受容ニューロンを化学遺伝学的に活性化させると、肝臓およびリンパ節における転移負荷が増大した。これらの知見は、腫瘍の増悪における末梢神経系の役割をより一層浮彫にし、CGRPとその下流シグナル伝達を標的とすることによる原発性および転移性胃がん治療の可能性を示している。