STINGの良い面

A good side of STING

Editors' Choice

Science Signaling
29 Apr 2025 Vol 18, Issue 884
DOI: 10.1126/scisignal.ady4818

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: lferrare@aaas.org

R. Wang, H. Sun, Y. Cao, Z. Zhang, Y. Chen, X. Wang, L. Liu, J. Wu, H. Xu, D. Wu, C. Mu, Z. Hao, S. Qin, H. Ren, J. Han, M. Fang, G. Wang, Glucosylceramide accumulation in microglia triggers STING-dependent neuroinflammation and neurodegeneration in mice. Sci. Signal. 17, eadk8249 (2024).

Z. Tang, C. Xing, A. Araszkiewicz, K. Yang, W. Huai, D. Jeltema, N. Dobbs, Y. Zhang, L. O. Sun, N. Yan, STING mediates lysosomal quality control and recovery through its proton channel function and TFEB activation in lysosomal storage disorders. Mol. Cell 85, 1624-1639.e5 (2025).

自然免疫メディエーターであるSTINGは、リソソームの機能不全を感知して修復する。

脳内の炎症は、種々の神経疾患および神経変性疾患の病理と進行に寄与する。自然免疫メディエーターであるSTINGは、この炎症の促進と関連している(本誌ArchivesのWangらの記事参照)。しかしTangらは、STINGの活性化には良い面があることを見いだした。細胞性物質および老廃物が蓄積して細胞の機能および生存が障害される複数のリソソーム蓄積症(LSD)マウスモデルにおいて、STINGは予想通り、ミクログリア(脳内の常在マクロファージ)で活性化されていた。STINGはミクログリアの炎症性遺伝子の発現を活性化したが、リソソームの生合成および機能を促進するリソソーム遺伝子の発現も誘導していた。リソソームの機能不全または傷害に応答して生じる、または直接のアゴニスト作用によるSTINGの活性化は、転写因子TFEBの脱リン酸化とそれに続く核内移行を促進した。TFEBは、リソソームの生合成ならびにリソソームの酵素とタンパク質の合成と関連する、多数の遺伝子のセットである「CLEAR(coordinated lysosomal expression and regulation)」ネットワークのトランス活性化を引き起こしていた。これらの影響は、STINGの欠失またはそのプロトンチャネル機能の阻害によって阻止されたが、一方で、STING依存性のインターフェロンシグナル伝達の活性化を阻害しても阻止されなかった。このことは、リソソーム機能におけるこのようなSTINGの役割が、自然免疫におけるその役割とは独立したものであることを示している。これらの知見は、LSD等の疾患における炎症抑制の有望な標的であるSTINGに対する治療法の開発にとって、意義があるものである。LSDであるクラッベ病のマウスモデルにおけるSTINGの欠失は、炎症応答を軽減したものの、リソソームの応答も阻害することから動物の生存率を改善することはなかった。同様に、急性リソソーム損傷の細胞モデルにおいて、リソソームの修復にはSTINGが(具体的にはインターフェロンのシグナル伝達ではなくそのプロトンチャネルの機能が)重要であった。このように、STINGを選択的に標的として、その炎症性インターフェロンシグナル伝達部分を阻害する一方で、リソソーム修復の部分は温存することが、より良い治療戦略であるかもしれない。

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