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神経科学
内から湧き起こる不安
Neuroscience
Anxiety, Recruited from Within
Sci. Signal., 4 May 2010
Vol. 3, Issue 120, p. ec128
[DOI: 10.1126/scisignal.3120ec128]
Elizabeth M. Adler
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
セロトニンに対する受容体の5-HT2AR、およびコルチコトロピン放出因子(CRF;ストレスに応答して下垂体からのコル チコトロピンの分泌を調節するのに加えて、神経調節物質としても作用する)に対する受容体のCRFR1の両方を介するシグナル伝達は、不安と関連づけられ てきた(Gonz?lez-Maeso参照)。CRFがセロトニンの作用を増強しうることを考慮して、Magalhaesらは、5-HT2ARとCRFR1の間のシグナル伝達相互作用について調べた。5-HT2ARとCRFR1は、それぞれ別の経路につながるGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、5-HT2ARのシグナル伝達はGαq/11を介してイノシトールトリスリン酸(IP3)の産生を亢進させ、CRFR1のシグナル伝達はGαsを介してアデノシン3',5'-一リン酸(cAMP)の産生を亢進させる。CRFR1の発現を伴って、あるいは伴わずに異種性に5-HT2ARまたは5-HT2CRを発現するヒト胎児由来腎臓細胞HEK293における実験によって、CRFによるCRFR1の活性化が5-HT2ARおよび5-HT2CRによって仲介されるイノシトールリン酸(おそらくIP3)の産生を亢進させることが明らかになった。他のGαs共役型のGPCRは5-HT2*Rシグナル伝達を亢進させることはなく、セロトニンはCRFR1を介するcAMP産生に影響しなかった。免疫蛍光解析によって、マウス前頭前野のニューロンの亜集団にCRFR1と5-HT2ARの両方が含まれることが明らかになり、HEK293細胞の場合と同じく、培養ニューロンをCRFで前処理すると、セロトニンを介するイノシトールリン酸の産生が亢進した。タグ標識された受容体の共焦点顕微鏡解析によって、5-HT2ARは構成的にエンドサイトーシスされる(HEK293細胞とラット皮質ニューロンの両方で)のに対して、CRFR1は構成的にはエンドサイトーシスされないことが明らかになった。CRFによってCRFR1のエンドサイトーシスが促進されて、エンドソームで5-HT2ARと共局在するようになった。エンドサイトーシスを遮断すると、CRFに依存して起こる5-HT2ARシグナル伝達の増強が妨げられた。また、CRFは細胞表面の5-HT2AR量を増大させたが、モネンシンまたはドミナントネガティブ型Rab4で細胞表面への受容体のリサイクリングを抑制すると、このCRFに依存して起こる5-HT2ARシグナル伝達の亢進も抑制された。5-HT2ARまたはCRFR1のC末端尾部にあるPDZドメイン結合モチーフを欠損させると、CRFに依存して起こる細胞表面5-HT2AR量の増大が遮断された。同様に、このような欠損は、CRFに依存して起こる5-HT2Rを介するイノシトールリン酸の産生の亢進も遮断した。CRFR1のC末端尾部の10アミノ酸を含むTat融合ペプチドを発現させても同様な結果が得られた。in vivo解析では、CRFR1と5-HT2Rの両方を刺激すると、マウスの不安関連行動に対する相乗効果がみられることが示された。そのため著者は、CRFR1を介するCRFシグナル伝達が細胞表面の5-HT2R量の増大を引き起こすことによって不安を高めると結論づけた。
A. C. Magalhaes, K. D. Holmes, L. B. Dale, L. Comps-Agrar, D. Lee, P. N. Yadav, L. Drysdale, M. O. Poulter, B. L. Roth, J.-P. Pin, H. Anisman, S. S. G. Ferguson, CRF receptor 1 regulates anxiety behavior via sensitization of 5-HT2 receptor signaling. Nat. Neurosci. 13, 622-629 (2010). [PubMed]
J. Gonz?lez-Maeso, Anxious interactions. Nat. Neurosci. 13, 524-526 (2010). [PubMed]
E. M. Adler, Anxiety, Recruited from Within. Sci. Signal. 3, ec128 (2010).