神経科学
翻訳に発見?

Neuroscience
Found in Translation?

Editor's Choice

Sci. Signal., 18 May 2010
Vol. 3, Issue 122, p. ec147
[DOI: 10.1126/scisignal.3122ec147]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

局所翻訳は特定の細胞内コンパートメントにおける遺伝子発現の調節を可能にする(Martin参照)。例えば、ニューロンでは、樹状突起における局 所翻訳は学習および記憶に寄与する過程に関与し、成長円錐における局所翻訳は軸索のガイダンスに関与することが示唆されている。Tcherkezianら は、ネトリン(分泌される軸索の成長とガイダンスの因子)の受容体であるDCC(deleted in colorectal cancer)に着目して、細胞外シグナルがニューロンにおける局所的なタンパク質翻訳を調節する機構について検討した。DCCは、培養交連ニューロンの 糸状仮足先端ではリボソームマーカーおよび新規合成タンパク質と共局在し、培養海馬ニューロンの樹状突起では後シナプスマーカーのPSD-95、 eIF4E(真核生物翻訳開始因子4E)および新規合成タンパク質と共局在した。翻訳開始因子およびリボソーム大小サブユニットタンパク質はネトリン受容 体を内在性に発現しない293細胞に導入されたDCC、および胚脊髄由来の内在性DCCとは共沈殿したが、細胞質ドメインを欠くDCC変異体(DCC- Δcyto)とは共沈殿しなかった。ショ糖密度勾配沈降速度法によって、DCCはリボソーム大小サブユニットと共沈降し、ポリソームよりモノソームと共沈 降することが明らかになった。DCCをトランスフェクションすると、ネトリンを分泌する293細胞における翻訳およびタンパク質合成が亢進し、ネトリンは DCCと翻訳装置の会合を抑制した。さらに、ネトリンは培養交連ニューロンの糸状仮足におけるDCCと会合する新規合成タンパク質の蓄積を促進した。 DCC-Δcytoは翻訳を促進せず、さらに解析すると、保存されたモチーフのP1がDCCの翻訳装置との会合、およびDCCのネトリン誘導性翻訳との関 係に関与することが示唆された。組換え型リボソームタンパク質L5は組換え型DCC細胞質ドメインと結合した。欠失解析によって、P1はL5に結合するこ とが示唆され、ニワトリ脊髄外植片では、翻訳を阻害するP1欠失型DCCがネトリン源へと向かう交連軸索の伸長を抑制した。著者らは、DCCが翻訳開始装 置に会合し、ネトリンがDCCシグナル伝達を刺激してDCCからのリボソームと翻訳開始因子の放出を促進することによって、活発にタンパク合成を行なうポ リソームの形成を促進すると提唱している。

J. Tcherkezian, P. A. Brittis, F. Thomas, P. P. Roux, J. G. Flanagan, Transmembrane receptor DCC associates with protein synthesis machinery and regulates translation. Cell 141, 632-644 (2010). [PubMed]

K. C. Martin, Anchoring local translation in neurons. Cell 141, 566-568 (2010). [Online Journal]

E. M. Adler, Found in Translation? Sci. Signal. 3, ec147 (2010).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2010年5月18日号

Editor's Choice

神経科学
翻訳に発見?

Research Article

TREM2とDAP12に依存するPI3Kの活性化は、DAP10を必要とし、SHIP1によって抑制される

c-mipは足細胞の近位シグナル伝達を障害して重症タンパク尿を引き起こす

Perspectives

旋回:別の血管新生パートナーと踊るCCM3

最新のEditor's Choice記事

2018年4月17日号

PD-1シグナル伝達を再検討する

2018年4月10日号

新たなつながり:単純なシグナル伝達系の複雑性

2018年4月3日号

新たなつながり:サイトカインは共有することを学ぶ

2018年3月27日号

新たなつながり:ROSによって治癒する

2018年3月20日号

新たなつながり:アルツハイマー病の病理学におけるアミロイドβ