アポトーシス
転写不要

Apoptosis
No Transcription Required

Editor's Choice

Sci. Signal., 1 June 2010
Vol. 3, Issue 124, p. ec161
[DOI: 10.1126/scisignal.3124ec161]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

ウイルス感染細胞で産生される二本鎖RNA(dsRNA)は、ウイルスの伝播を制限するために複数の応答を引き起こす。そのような応答のひとつが、 転写因子IRF-3(interferon regulatory factor 3、インターフェロン調節因子-3)の活性化である。この活性化は、RIG-1様ヘリカーゼ(RLH)によるウイルスdsRNAの検出、およびミトコンド リアにおけるRLHとアダプターMAVS、ユビキチンリガーゼのTRAFファミリーに属するさまざまなメンバー、およびキナーゼTBK1との相互作用の後 に起こる。抗ウイルス遺伝子を誘導するだけでなく、IRF-3はアポトーシス促進性タンパク質の産生も促進して、感染細胞の死を引き起こすことができる。 Chattopadhyayらは、IRF-3がアポトーシスを仲介することのできる転写非依存的な機構を同定した。著者らは、特異的ノックアウトマウスの 胚線維芽細胞の解析によって、IRF-3が感染細胞またはポリイノシン-ポリシトシン[poly(I:C)]曝露細胞のいずれのアポトーシスにも必要であ ることを実証した後、poly(I:C)またはウイルスによって誘導されるアポトーシスにRLH RIG-1、MAVS、TRAF3、TRAF2、TRAF6、およびTBK1が必要であることを示した。驚くべきことに、IRF-3欠損細胞を転写活性を 欠く変異型IRF-3で再構成すると、poly(I:C)に応答して起こるアポトーシスが回復した。カスパーゼ9を阻害またはノックダウンすると poly(I:C)誘導性アポトーシスは遮断されたが、カスパーゼ8を阻害またはノックダウンしてもpoly(I:C)誘導性アポトーシスは遮断されない ことから、内因性ミトコンドリアのアポトーシス経路が細胞死を仲介することが示唆された。実際に、IRF-3は、poly(I:C)に応答して核内に移行 しただけでなく、ミトコンドリア内にも移行した(細胞分画アッセイに基づく)。ウイルス感染細胞では、IRF-3とアポトーシス促進性タンパク質のBax との間に相互作用が認められたが、IRF-3の推定上のBH3ドメイン(タンパク質間相互作用を仲介することが知られており、アポトーシスを調節するタン パク質によくみられるドメイン)に点変異を導入するとこの相互作用は消失した。poly(I:C)に応答するBaxの活性化(コンフォメーション特異的抗 体により検出)はIRF-3欠損細胞では消失したが、逆に、Bax欠損細胞ではウイルスまたはpoly(I:C)に誘導されるアポトーシスは起こらなかっ た。野生型またはBax欠損型のいずれかの細胞から抽出したBaxを用いて行われたin vitroでのミトコンドリアシトクロムc放 出アッセイでは、IRF-3の添加がシトクロムc放出の十分条件であった。このように、IRF-3は抗ウイルス応答において、転写応答の開始とミトコンド リアでのアポトーシスの直接的な仲介という二重の機能を果たしている(Vince and Tschoppの解説参照)。

N. R. Gough, No Transcription Required. Sci. Signal. 3, ec161 (2010).

S. Chattopadhyay, J. T. Marques, M. Yamashita, K. L. Peters, K. Smith, A. Desai, B. R. G. Williams, G. C. Sen, Viral apoptosis is induced by IRF-3-mediated activation of Bax. EMBO J. 29, 1762-1773 (2010). [PubMed]

J. E. Vince, J. Tschopp, IRF-3 partners Bax in a viral-induced dance macabre. EMBO J. 29

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2010年6月1日号

Editor's Choice

アポトーシス
転写不要

Research Article

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