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心を刺激し、がんと闘え

Cancer
Stimulate the Mind, Fight Cancer

Editor's Choice

Sci. Signal., 20 July 2010
Vol. 3, Issue 131, p. ec217
[DOI: 10.1126/scisignal.3131ec217]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Caoらは、広いケージにトンネルや回し車などを入れた豊かな飼育環境が腫瘍増殖に及ぼす影響について検討した(Kappelerおよび Meaneyも参照)。豊かな環境(enriched environment)で飼育したマウス(EEマウス)は、標準的な群飼を行った対照マウスに比べて、B16黒色腫細胞皮下注射後に発症した腫瘍の数が 少なく、サイズが小さく、増殖速度が遅かった。さらに、EEマウスでは、アディポネクチン濃度の上昇やレプチン濃度の低下など、各種循環因子の血清中濃度 に変化が見られた。EEマウス由来血清はB16黒色腫細胞のin vitroでの増殖を抑制したが、このような作用は、レプチンに対す る中和抗体で前処理した対照マウス由来血清でも見られた。視床下部の核の遺伝子発現解析の結果、脳由来神経栄養因子(BDNF)をコードするmRNA量 は、EEマウスの弓状核の方が対照マウスの弓状核に比べて多かった。BDNFの視床下部における過剰発現は血清レプチン濃度および腫瘍サイズを低下させた のに対して、マイクロRNAによるBDNFの視床下部特異的ノックダウンはレプチン濃度や腫瘍増殖に対するEEの作用を遮断した。アディポネクチン(Adipoqによってコードされる)およびレプチン(Lepによってコードされる)は白色脂肪組織(WAT)によって分泌され、Lepの量はβアドレナリン作動性受容体刺激によって減少する。WATの遺伝子発現解析によって、EE飼育マウスはLepの量が少なく、Adipoqの量が多いだけでなく、Adrb1Adrb2およびAdrb3(β アドレナリン作動性受容体アイソフォームをコードする)の量も多いことが示された。β受容体遮断薬であるプロプラノロールの投与は、レプチンやアディポネ クチンの濃度および腫瘍増殖によって評価したEEの作用を遮断した。レプチン濃度の上昇はEEの作用を遮断すると考えられ、実際に、レプチン放出リポソー ムを移植されたマウスの腫瘍は大きかった。レプチンが欠損したob/obマウスでは、EEにより腫瘍サイズは減少せ ず、浸透圧ミニポンプで生理学的濃度までレプチンを補充すると腫瘍サイズが増加した。大腸腫瘍が確立されるまでEE飼育しなかったマウスでも、通常飼育し たマウスに比べて、血清中レプチン濃度が低く、腫瘍重量が小さかった。さらに、大腸腺腫症(APC)遺伝子に変異を有する大腸癌モデルであるApcMin/+マ ウスでは、EEにより血清中レプチン濃度が低下し、腸ポリープの数およびサイズが減少した。以上により、EEは視床下部のBDNFを活性化し、βアドレナ リン作動性シグナル伝達を介してレプチン放出を抑制し、各種がんモデルにおいて、腫瘍重量および腫瘍発生率を低減することができる。

L. Cao, X. Liu, E.-J. D. Lin, C. Wang, E. Y. Choi, V. Riban, B. Lin, M. J. During, Environmental and genetic activation of a brain-adipocyte BDNF/leptin axis causes cancer remission and inhibition. Cell 142, 52-64 (2010). [PubMed]
L. Kappeler, M. J. Meaney, Enriching stress research. Cell 142, 15-17 (2010). [PubMed]

W. Wong, Stimulate the Mind, Fight Cancer. Sci. Signal. 3, ec217 (2010).

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