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As a Matter of Fak...

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Sci. Signal., 31 August 2010
Vol. 3, Issue 137, p. ec262
[DOI: 10.1126/scisignal.3137ec262]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

 

接着斑キナーゼ(Fak)はインテグリンが媒介する生存シグナルを伝達し、結腸直腸がんを含むさまざまな腫瘍でその存在量が増大する。Wntエフェ クターであるβ-カテニンの分解を促進する足場タンパク質の大腸線腫症(APC)タンパク質の喪失は結腸直腸がんと関連があり、Wntシグナル伝達は遺伝 的または機械的損傷後の腸の再生過程で活性化される。腸幹細胞は結腸直腸腫瘍形成に関与しているとされ、腸上皮のホメオスタシスや再生に必要である。 Ashtonらは、Fakが正常なマウス腸上皮に存在し、その存在量は腸上皮からApc欠失した後、および放射線照射後の再生過程で増 大すると報告している。Fakは腸上皮細胞の再生には必要であったが、正常な入れ換えのために失われた腸上皮細胞の恒常的置換には必要ではなかった。ま た、AktおよびmTOR(哺乳類のラパマイシン標的タンパク質)のリン酸化型(p-Aktおよびp-mTOR)が増加したことから、Fakは、上皮再生 の際にmTOR経路を介するシグナル伝達の活性化にも必要であった。mTOR経路の化学阻害剤は再生を抑制したことから、FakはWntシグナル伝達とイ ンテグリンシグナル伝達を統合してmTORシグナル伝達を活性化すると考えられる。マウスを放射線照射後にインスリン様成長因子1(IGF1)で処理する ことによってmTORシグナル伝達を活性化すると、Fak欠失上皮において再生が回復した。FakはApc欠失腸上皮に認められる増殖亢進に必要であり、p-Aktおよびp-mTORの量は、Apcのみが欠失した腸上皮に比べて、ApcFakの両方が欠失した腸上皮の方が少なかった。また、Fakの欠失はApcヘ テロ接合体における腺腫の形成を抑制した。総合すると、これらの結果はFakは腸再生および腫瘍形成においてWntシグナル伝達とmTOR活性化を結び付 けるが、腸ホメオスタシスには必要ではないことを示唆する。このことから、Fakは高リスク患者における直腸結腸腫瘍形成の予防の標的となり得ると考えら れる。Evanの論評では、腸の生物学および疾患に対するこれらの知見の意義について検討している。

G. H. Ashton, J. P. Morton, K. Myant, T. J. Phesse, R. A. Ridgway, V. Marsh, J. A. Wilkins, D. Athineos, V. Muncan, R. Kemp, K. Neufeld, H. Clevers, V. Brunton, D. J. Winton, X. Wang, R. C. Sears, A. R. Clarke, M. C. Frame, O. J. Sansom, Focal adhesion kinase is required for intestinal regeneration and tumorigenesis downstream of Wnt/c-Myc signaling. Dev. Cell. 19, 259-269 (2010). [PubMed]

G. Evan, Getting one’s Fak straight. Dev. Cell. 19, 185-186 (2010). [PubMed]

A. M. VanHook, As a Matter of Fak... Sci. Signal. 3, ec262 (2010).

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