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細胞生物学
エキソソームを通って出る

Cell Biology
Exit by Exosome

Editor's Choice

Sci. Signal., 28 September 2010
Vol. 3, Issue 141, p. ec294
[DOI: 10.1126/scisignal.3141ec294]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

テトラスパニンは、様々な腫瘍においてその存在量の減少を示す膜貫通型タンパク質である。対照的に、β-カテニンの存在量の増は大腸がんと関連があ る。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK-3β)による基礎的なリン酸化によって、β-カテニンはプロテアソームによる分解へと導かれる。 GSK-3βによるリン酸化を抑制するシグナルは、安定化されたβ-カテニンの核移行と遺伝子転写の開始を可能にする。過去のマイクロアレイ解析から、テ トラスパニンのCD9がWntシグナル伝達を抑制する可能性があることが示唆されたことから、Chairoungduaらは、考えられる結び付きについて 検討した。β-カテニンを発現する細胞において、テトラスパニンのCD9またはCD82を同時導入すると、細胞質および核のβ-カテニン存在量が減少し、 β-カテニン転写レポーターの活性が低下したが、CD63を同時導入した場合はそうではなかった。β-カテニン存在量の減少は、プロテアソームまたはリソ ソーム経路による分解を介して生じたのではなく、GSK-3βを必要としなかった。代わりに、β-カテニンの局在が核(対照プラスミドまたはCD63を同 時導入した場合)から、斑点状あるいは膜に会合した状態(CD9またはCD82を同時導入した場合)へと変化した。電子顕微鏡解析によって、β-カテニン はエキソソーム内へと放出されることが明らかになった。エキソソーム内へのβ-カテニンの放出には、CD9およびCD82の共発現に加えてE-カドヘリン が必要であり、遺伝子導入細胞において、CD82はβ-カテニンやE-カドヘリンと共免疫沈降した。Cd9-/-ノッ クアウトマウスの骨髄由来樹状細胞は、野生型マウスの樹状細胞と比較して、エキソソームを少数しか放出しなかったので、エキソソームの形成にCD9が機能 的な役割を果たすことが示唆された。このように、CD9とCD82は、エキソソーム内にあるβ-カテニンの細胞外への放出を促進することによって、β-カ テニン依存性シグナル伝達に拮抗する。

A. Chairoungdua, D. L. Smith, P. Pochard, M. Hull, M. J. Caplan, Exosome release of β-catenin: A novel mechanism that antagonizes Wnt signaling. J. Cell Biol. 190, 1079-1091 (2010). [Abstract] [Full Text]

W. Wong, Exit by Exosome. Sci. Signal. 3, ec294 (2010).

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2010年9月28日号

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