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スフィンゴ脂質:炎症を促進するTRAFという火に注ぐ油

Sphingolipids: The Oil on the TRAFire That Promotes Inflammation

Perspectives

Sci. Signal., 28 September 2010
Vol. 3, Issue 141, p. pe34
[DOI: 10.1126/scisignal.3141pe34]

Gennaro Napolitano and Michael Karin*

Laboratory of Gene Regulation and Signal Transduction, Departments of Pharmacology and Pathology, School of Medicine, University of California, San Diego, 9500 Gilman Drive, La Jolla, CA 92093, USA.

* Corresponding author. E-mail, karinoffice@ucsd.edu

要約:腫瘍壊死因子受容体(TNFR)関連因子(TRAF)は、TNFRおよびToll様受容体(TLR)の下 流で作用して炎症と免疫応答を制御する。特にTRAF2は、古典的な炎症性サイトカインのTNF-αによるシグナル伝達との関連で幅広く研究されている。 TRAF2にはRINGフィンガーがあるので、TRAF2は、受容体誘導タンパク質1(receptor-induced protein 1:RIP1)の非標準的なLys-63(K63)結合型ポリユビキチン化を触媒するE3ユビキチンリガーゼとして作用することが示唆されている。このポ リユビキチン化は、IκBキナーゼ複合体、ひいては核因子κBの活性化に不可欠なイベントである。そのうえ、TRAF2自体が、受容体ライゲーションの際 に迅速に誘導される修飾であるK63結合型ポリユビキチン化の対象であり、これは自己ユビキチン化の結果であると解釈されていた。ところが、TRAF2が 活性を有するE3ユビキチンリガーゼであることを示す正式な証拠はなかった。新たな証拠は、炎症応答の際に合成されるスフィンゴ脂質であるスフィンゴシン -1-リン酸(S1P)がTRAF2ユビキチンリガーゼ活性にとって不可欠な補因子であることを示す。S1Pは、TRAF2に結合して、TRAF2が仲介 するRIP1のK63結合型ポリユビキチン化を促進し、TRAF2が活性を有するE3ユビキチンリガーゼであることを示す直接的な証拠を提供するととも に、TNFRおよびTLRシグナル伝達の領域に脂質セカンドメッセンジャーを導入する。

G. Napolitano, M. Karin, Sphingolipids: The Oil on the TRAFire That Promotes Inflammation. Sci. Signal. 3, pe34 (2010).

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