味覚受容体
苦い薬

Taste Receptors
Bitter Medicine

Editor's Choice

Sci. Signal., 9 November 2010
Vol. 3, Issue 147, p. ec340
[DOI: 10.1126/scisignal.3147ec340]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

 

喘息や他の呼吸障害患者における気道閉塞は、気道平滑筋(ASM)の収縮が原因である。ASMの収縮と弛緩はGタンパク共役型受容体(GPCR)により制御される。ヒスタミン受容体などの収縮を促進するGPCRは、細胞内Ca2+濃度の上昇を刺激するのに対して、β2アドレナリン受容体(β2AR)などの弛緩を促すGPCRは、環状アデノシン一リン酸(cAMP)の細胞内濃度の上昇とCa2+シ グナル伝達の抑制を引き起こす(Sanderson and Madisonのコメント参照)。Deshpandeらの研究グループは、以前に、気道閉塞を調節すると思われるGPCRの存在についてヒトASM細胞を スクリーニングし、苦味物質に対するいくつかの受容体(TAS2R)と、その同族Gタンパク質であるgustducinを発見した。培養ヒトASM細胞を TAS2Rアゴニスト(サッカリンやクロロキンなど)で刺激すると細胞内Ca2+の動員が起こり、これはヒスタミン受容体の刺激によって誘発される動員に匹敵した。しかし無損傷のマウス気管において、苦味物質は血管の収縮ではなく弛緩を誘発した。実際に、β2ARアゴニストであるイソプロテレノールに対する弛緩応答よりも、クロロキンに対する弛緩応答の方が大きかったが、TAS2RがcAMP量に影響を及ぼしたという証拠はなかった。その代わりに、著者らは局所的なTAS2R依存性Ca2+シグナル伝達が大コンダクタンスCa2+依存性K+チャネル(BKCa)を開口させ、膜の脱分極と気管支拡張を誘発することを提案している。マウスの喘息モデルでは、苦味物質であるキニーネの吸入によって気道閉塞の程度が改善され、これはβ2ARアゴニストよりも有効であった。以上により、苦味物質は、単独で使用しても現在の治療薬と併用しても、気道閉塞に有効な治療薬であると考えられる。

D. A. Deshpande, W. C. H. Wang, E. L. McIlmoyle, K. S. Robinett, R. M. Schillinger, S. S. An, J. S. K. Sham, S. B. Liggett, Bitter taste receptors on airway smooth muscle bronchodilate by localized calcium signaling and reverse obstruction. Nat. Med. 16, 1299-1304 (2010). [PubMed]

M. J. Sanderson, J. M. Madison, Bitter treats for better breathing. Nat. Med. 16, 1190-1191 (2010). [Online Journal]

J. F. Foley, Bitter Medicine. Sci. Signal. 3, ec340 (2010).

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