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免疫学
NFATを抑制する
Immunology
Holding Back NFAT
Sci. Signal., 25 October 2011
Vol. 4, Issue 196, p. ec295
[DOI: 10.1126/scisignal.4196ec295]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
Z. Liu, J. Lee, S. Krummey, W. Lu, H. Cai, M. J. Lenardo, The kinase LRRK2 is a regulator of the transcription factor NFAT that modulates the severity of inflammatory bowel disease. Nat. Immunol. 12, 1063-1070 (2011). [PubMed]
B. Jabri, L. B. Barreiro, Don't move: LRRK2 arrests NFAT in the cytoplasm. Nat. Immunol. 12, 1029-1030 (2011). [PubMed]
全ゲノム研究から、多くの遺伝子座が炎症性腸疾患(IBD)に対する感受性と関連付けられている。しかし、これらの遺伝子産物の多くがどのようにIBDに寄与するかははっきりしない(JabriとBarreiroによる注釈参照)。1つの例は、クローン病(CD)と高度に関連しているleucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)をコードする遺伝子である。Liuらは、LRRK2欠損マウス(Lrrk2-/-マウス)が、野生型マウスと比較して、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘導される大腸炎に対する感受性が高いことを明らかにした。野生型またはLrrk2-/-マウスに由来する骨髄細胞を、DSS曝露前にレピシエントマウスに移植する実験から、造血細胞におけるLrrk2欠損が大腸炎を悪化させるのに十分であることが示された。ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)におけるRNA干渉スクリーニングによって、転写因子の活性化T細胞核因子(NFAT)の活性をLRRK2のオルソログが抑制することが示唆された。ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞にLRRK2をコードするプラスミドをトランスフェクションすると、対照プラスミドをトランスフェクションした細胞と比較して、NFATレポーターの活性が低下した。LRRK2存在量の増大は、刺激された細胞におけるNFATの核内蓄積の減少と相関していたが、この効果にはLRRK2のキナーゼ活性は必要なかった。免疫沈降法では、LRRK2が、NFAT1と高分子非コードRNA(NRON)も含むタンパク質複合体の構成要素の間の会合を促進することが示された。このことによって、NFATがサイトゾルに保持されることでその活性が抑制される。Lrrk2-/-マウスから得られた骨髄由来マクロファージ(BMDM)をザイモサン(カンジダCandida細胞壁の構成成分)で刺激すると、野生型BMDMを刺激した場合と比較して、より大量の炎症性サイトカインが産生された。CDと関連しているヒトLRRK2の遺伝子多型の1つでは、Thr2397がメチオニンに置換("M2397"対立遺伝子)されていた。Liuらは、LRRK2のM2397型がT2397型よりも安定性が低く、NFAT活性の抑制作用が低下していることを明らかにした。これらのデータを考えあわせると、LRRK2はNFATをサイトゾルに保持するように作用し、IBDと関連する遺伝子多型によってLRRK2の存在量が減少すると、NFAT活性が亢進し、炎症性サイトカインの産生が増大させることが示唆される。
J. F. Foley, Holding Back NFAT. Sci. Signal. 4, ec295 (2011).