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細胞生物学
インテグリンの活性化をαサブユニットにおいて遮断する

Cell Biology
Blocking Integrin Activation at the α Subunit

Editor's Choice

Sci. Signal., 8 November 2011
Vol. 4, Issue 198, p. ec309
[DOI: 10.1126/scisignal.4198ec309]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. K. Rantala, J. Pouwels, T. Pellinen, S. Veltel, P. Laasola, E. Mattila, C. S. Potter, T. Duffy, J. P. Sundberg, O. Kallioniemi, J. A. Askari, M. J. Humphries, M. Parsons, M. Salmi, J. Ivaska, SHARPIN is an endogenous inhibitor of β1-integrin activation. Nat. Cell Biol. 13, 1315–1324 (2011). [PubMed]

M. D. Bass, SHARPINing integrin inhibition. Nat. Cell Biol. 13, 1292–1293 (2011). [PubMed]

インテグリンは、αサブユニットとβサブユニットからなるヘテロ二量体であり、細胞外マトリックスタンパク質に対する細胞接着を制御する。インテグリンの活性状態はダイナミックな調節を受け、状況と細胞外シグナルに依存して、細胞は遊走したり、分裂したり、または定常状態を維持したりできる。インテグリンは3つのコンホメーションをとることができる。すなわち、低〜中程度のリガンド親和性をもつ2つの不活性なコンホメーションと、高いリガンド親和性をもつ活性状態と考えられる1つのコンホメーションである。活性型と不活性型のコンホメーションは、特異的な抗体によって検出できる(Bass参照)。インテグリンのコンホメーションに関してこれまでに知られている調節因子は、βサブユニットのサイトゾルドメインと相互作用して、リガンドに対して開いた状態を促進するか、またはそのような状態を促進するタンパク質の結合を抑制するかのいずれかである。Rantalaらは、αサブユニットに結合するインテグリン活性化抑制因子としてSHARPINを同定した。SHARPINをノックダウンすると、活性型β1インテグリンに対して特異的な抗体の結合は増大し、不活性型β1インテグリンに対して特異的な抗体の結合は減少した。SHARPINの過剰発現によって、活性型β1インテグリンは減少した。SHARPINをノックダウンすると、低濃度マトリックス上での細胞遊走速度の上昇と、フィブロネクチンに対する細胞接着の増大もみられた。in vitroのプルダウンアッセイによって、SHARPINはα1またはα2インテグリンの細胞質側末端のペプチドには結合するが、β1インテグリンの細胞質側末端のペプチドには結合しないことが示された。この相互作用は、蛍光タンパク質で標識したタンパク質間の蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer:FRET)によって、培養細胞でも検出された。SHARPINは、膜ラッフルで不活性型β1インテグリンと共局在したが、マトリックス接着部位の活性型β1インテグリンとは共局在しなかった。SHARPINとαインテグリンの共免疫沈降は、培養皿に付着した細胞の場合と比べて、懸濁液中の細胞で増大し、このことはリガンドと結合していないインテグリンへのSHARPINの結合が促進されることと一致している。FRETおよび近接ライゲーションアッセイ(proximity ligation assay:PLA)によって、活性化タンパク質のキンドリン(kindlin)とタリン(talin)のβサブユニットへの結合をSHARPINが妨げることが示された。SHARPINをコードする遺伝子に変異を有するマウスあるいはこのマウス由来の細胞の解析によって、ケラチノサイトの亜集団で活性型β1インテグリンを認識する抗体との結合が亢進し、単離された脾細胞で活性型β1インテグリンが増大し、インテグリンのリガンドとの結合が亢進することが示された。このように、SHARPINはインテグリンの活性を調節する主要な調節因子であるらしく、そのような調節はαサブユニットとの相互作用を介して行われる。

N. R. Gough, Blocking Integrin Activation at the α Subunit. Sci. Signal. 4, ec309 (2011).

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2011年11月8日号

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