• ホーム
  • アルドステロンはどうやって心臓を破るのか

アルドステロンはどうやって心臓を破るのか

How Aldosterone Can Break Your Heart

Editor's Choice

Sci. Signal., 13 December 2011
Vol. 4, Issue 203, p. ec343
[DOI: 10.1126/scisignal.4203ec343]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

B. J. He, M.-l. A. Joiner, M. V . Singh, E. D. Luczak, P. D. Swaminathan, O. M. Koval, W. Kutschke, C. Allamargot , J. Yang, X. Guan, K. Zimmerman, I. M. Grumbach, R. M. Weiss, D. R. Spitz, C. D. Sigmund, W. M. Blankesteijn, S. Heymans, P. J. Mohler, M. E. Anderson, Oxidation of CaMKII determines the cardiotoxic effects of aldosterone. Nat. Med. 17, 1610-1618 (2011). [PubMed]

心筋梗塞後の交感神経系およびレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の過剰活性化は、心不全および突然死を促す。β-アドレナリン作動性シグナル伝達やアンジオテンシンII(Ang II)シグナル伝達の亢進の病理学的影響は、心筋のCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)の活性化に依存する。Heらは、マウスのモデル系を用いて、アルドステロンシグナル伝達が心不全を引き起こす機構について研究した。アルドステロンを注入すると、15分以内に心臓の活性酸素種(ROS)が増加する。このような応答は、機能的なNADPHオキシダーゼを欠損するマウスでは鈍かった。著者らは、Ang IIが心筋CaMKIIの調節ドメインの2つのメチオニンの酸化を介して活性化することに注目し、アルドステロンが酸化型心筋CaMKII(ox-CaMKII)量、およびCa2+/カルモジュリン依存的な自律的CaMKII活性を増大させることを明らかにした。アルドステロンは、培養新生児筋細胞中のROS存在量およびox-CaMKIIも増加させた。この効果は、ミネラルコルチコイドのアンタゴニスト、NADPHオキシダーゼ阻害剤、またはRac1(ミネラルコルチコイドによる内皮細胞内のNADPHオキシダーゼ活性化に必要な低分子量GTPアーゼ)のドミナント・ネガティブ型によって抑制された。心臓のメチオニンスルホキシドレダクターゼ(MsrA)が増加しているトランスジェニックマウスでは、野生型マウスに比べて心臓のROS産生は低下することなく、アルドステロンによるCamKIIの酸化が低下した。心筋梗塞マウスに、梗塞後の血中アルドステロン濃度が高いハイリスク者に認められる濃度と同等のアルドステロンを注入すると、ox-CAMKII、自律的CaMKII活性、および死亡率が増加した。この超過死亡は心破裂に起因していた。さまざまなトランスジェニックマウスモデルにおいて、梗塞後心破裂に対する影響について解析したところ、心筋CaMKIIの阻害(AC3-Iマウス)は、NADPHオキシダーゼ活性化の喪失または心MsrAの増加と同様、アルドステロンの副作用からマウスを保護した。一方、MsrA-/-マウスは死亡率が高かった。マトリックス・メタロプロテイナーゼ9(MMP9)はマウスの心破裂に寄与し、遺伝子アレイ解析および定量的RT-PCRによって、AC3-Iマウスは野生型マウスに比べて梗塞後のMmp9発現が低いことが示された。梗塞領域から単離した心筋細胞の免疫蛍光解析によって遺伝子発現量の変化に一致してMMP9存在量も変化していることが示され、ヒト心臓組織の解析によってMMP9の増加は心破裂と相関することが示唆された。アルドステロンは、CaMKII活性に依存して培養新生児筋細胞中のMMP9活性を亢進させた。配列解析によって、Mmp9プロモーターにおいて、CaMKII下流で活性化される筋細胞エンハンサー因子2(MEF2)の推定結合部位が特定された。MEF2-lacZトランスジェニックマウスの解析によって、アルドステロンは心筋のMEF2を活性化することが示され、筋細胞に発現させたMmp9プロモーター誘導レポーターの解析によって、同定されたMEF2結合部位はアルドステロンによるMmp9転写活性化に必須であることが示された。したがって、われわれは、アルドステロンの心毒性はCaMKIIの酸化的活性化に依存しており、CaMKIIは心筋梗塞後の超過死亡と相関する神経液性経路の「マスター」ノードであると結論付ける。

E. M. Adler, How Aldosterone Can Break Your Heart. Sci. Signal. 4, ec343 (2011).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2011年12月13日号

Editor's Choice

アルドステロンはどうやって心臓を破るのか

Research Article

ホスファターゼPTP1BのH2S-誘導性スルフヒドリル化および小胞体ストレス応答における役割

アクチンコメットか細胞膜ラッフルの誘導:アクチン再構成に対するホスホイノシチドの異なる影響

Perspectives

インスリンシグナル伝達の調節には複数の生物が関わるのか?

Protocols

培養細胞の核シグナル伝達分子、サイトゾルのシグナル伝達分子、膜結合型シグナル伝達分子の分離方法

最新のEditor's Choice記事

2024年2月27日号

ccRCCでTBK1を遮断する方法

2024年2月20日号

密猟者がT細胞内で森の番人に転身した

2024年2月13日号

RNAが厄介な状況を生み出す

2024年2月6日号

細胞外WNT伝達分子

2024年1月30日号