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ホスファターゼPTP1BのH2S-誘導性スルフヒドリル化および小胞体ストレス応答における役割

H2S-Induced Sulfhydration of the Phosphatase PTP1B and Its Role in the Endoplasmic Reticulum Stress Response

Research Article

Sci. Signal., 13 December 2011
Vol. 4, Issue 203, p. ra86
[DOI: 10.1126/scisignal.2002329]

Navasona Krishnan, Cexiong Fu, Darryl J. Pappin, and Nicholas K. Tonks*

Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY 11724, USA.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: tonks@cshl.edu

要約:硫化水素(H2S)は、本来は有毒であると考えられてきたが、様々な生物学的過程と関連がある。それにもかかわらず、硫化水素の細胞内の標的や作用様式はあまりわかっていない。多くのシグナル伝達経路を調節するプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)は、活性部位に必須のシステイン残基を有する。このシステイン残基は、低いpKa値という特徴があり、可逆的な酸化をうけやすい。本稿でわれわれは、PTP1Bがin vitroおよび細胞内で、活性部位のシステイン残基のスルフヒドリル化(SH化)を介して、H2Sによって可逆的に不活性化されることについて報告する。酸化されたPTP1Bとは異なり、SH化された酵素は、in vitroでは、グルタチオンやジチオスレイトールと比較して、チオレドキシンによって還元されやすかった。PTP1Bの細胞内でのSH化には、H2Sの産生にとって重要な酵素であるシスタチオニンγ-リアーゼ(CSE)を必要であり、SH化の結果としてホスファターゼの活性が阻害された。CSEの抑制によりH2Sの産生が低下し、PERK[プロテインキナーゼ様小胞体(ER)キナーゼ]の619番目のチロシンのリン酸化が低下した。これよって、ERストレスに応答するPERK活性化が低下した。真核生物の翻訳開始因子2(eIF2)のリン酸化をしてタンパク翻訳を抑制するPERKは、PTP1Bの直接の基質であった。さらに、CSEのノックダウンは、これまでにPTP1Bによって仲介されることが示されている非受容体型チロシンキナーゼSRCの活性化を引き起こした。これらのERストレス応答におけるH2S産生抑制の影響は、PTP1Bの小分子阻害剤により抑制された。これらの結果は、ERストレス応答の際のPTP1B活性の阻害とそれによるPERK活性の促進におけるH2Sのシグナル伝達機能を明確にするものである。

N. Krishnan, C. Fu, D. J. Pappin, N. K. Tonks, H2S-Induced Sulfhydration of the Phosphatase PTP1B and Its Role in the Endoplasmic Stress Response. Sci. Signal. 4, ra86 (2011).

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