グリア
Draperの分身

Glia
Draper Doppelganger

Editor's Choice

Sci. Signal., 8 May 2012
Vol. 5, Issue 223, p. ec127
[DOI: 10.1126/scisignal.2003194]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. A. Logan, R. Hackett, J. Doherty, A. Sheehan, S. D. Speese, M. R. Freeman, Negative regulation of glial engulfment activity by Draper terminates glial responses to axon injury. Nat. Neurosci. 15, 722-730 (2012). [PubMed]

グリアは、損傷したニューロンに対して応答し、膜突起を伸ばすことによって細胞の残がいを貪食して(飲み込んで)除去する。ショウジョウバエ(Drosophila)において、グリアの貪食には、貪食受容体Draperと、その下流のエフェクターである非受容体チロシンキナーゼSharkなどが必要である。Loganらは、貪食の調節におけるDraperの3つのアイソフォームの役割について検討した。ショウジョウバエにおいて、嗅覚受容器ニューロン(ORN)の切断された軸索から出た残がいをグリアが貪食するためには、Draper Iの細胞内ITAM(免疫受容体活性化チロシンモチーフ)が必要であった。一方、Draper IIは、グリアが残がいを除去する能力を抑制し、この作用には細胞内ドメインのITIM(免疫受容体抑制性チロシンモチーフ)が必要であった。トランスフェクションされた細胞においては、チロシンホスファターゼCorkscrew(Csw)がDraper IIと相互作用し、これを脱リン酸化した。CswはさらにSharkも脱リン酸化し、その活性を抑制すると予想された。in vivoでは、グリア細胞にDraper IIを過剰発現させると、軸索の残がいの除去が妨げられ、この作用は、グリア細胞のCswに対するRNA干渉(RNAi)によって低下した。ORNの損傷後、Draper IIのmRNA量は、Draper IのmRNA量よりも緩やかに増大し、これは、Draper Iを介する貪食応答を終結させるDraper IIの役割と一致した。グリアにCsw特異的RNAiを発現しているハエにおいては、野生型のハエと比べて、触覚神経軸索切断(軸索の切断)後のCed-6(アポトーシスを起こした細胞の貪食に関与するタンパク質)とDraper Iの存在量が高く、軸索切断に対するグリアの応答が、Cswの非存在下では終結しないことが示唆された。連続的な上顎神経軸索切断のモデルにおいては、野生型ハエでは軸索の残がいが除去されたが、Csw特異的RNAiを発現しているハエでは除去されなかった。著者らは、反復的な損傷に対するグリアの応答がCswの非存在下では抑制されること、また、Draper IIとCswは損傷後のグリアをリセットする役割を果たすことを提唱した。これらの結果は、Draper IIとCswが、Draper Iの活性を抑制することによって、ニューロンの損傷に対するグリアの応答を終結させるように作用することを示している。Draper IIIは細胞内ドメインに完全なITAMをもたず、その欠損によってグリアの貪食に影響はなかった。

W. Wong, Draper Doppelganger. Sci. Signal. 5, ec127 (2012).

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2012年5月8日号

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