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免疫学
セラミドはマスト細胞を抑制する

Immunology
Ceramide Keeps Mast Cells in Check

Editor's Choice

Sci. Signal., 27 November 2012
Vol. 5, Issue 252, p. ec302
[DOI: 10.1126/scisignal.2003810]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. Izawa, Y. Yamanishi, A. Maehara, M. Takahashi, M. Isobe, S. Ito, A. Kaitani, T. Matsukawa, T. Matsuoka, F. Nakahara, T. Oki, H. Kiyonari, T. Abe, K. Okumura, T. Kitamura, J. Kitaura, The receptor LMIR3 negatively regulates mast cell activation and allergic responses by binding to extracellular ceramide. Immunity 37, 827-839 (2012). [PubMed]

マスト細胞は、細胞表面の高親和性免疫グロブリンE受容体(FcεRI)複合体へのリガンド結合に応答してアレルギー反応を引き起こす。FcεRIシグナル伝達は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif:ITAM)に依存する。活性化されたマスト細胞は、脱顆粒を起こし、ヒスタミンなどの血管作動性アミンとインターロイキン-6(interleukin-6:IL-6)などの炎症性サイトカインを分泌する。Izawaらは、FcεRIによるシグナル伝達の抑制において、抑制性シグナル伝達モチーフ(ITIM)をもつ受容体LMIR3が果たす役割について調べた。FcεRI刺激後の脱顆粒とサイトカイン放出は、野生型マウスとLMIR3欠損マウスから単離した培養骨髄由来マスト細胞(bone marrow-derived mast cell:BMMC)では同様であった。しかし、FcεRIとLMIR3の両方にリガンドが結合すると、野生型細胞の活性化は低下した。マスト細胞依存性の気道炎症と皮膚炎は、LMIR3欠損マウスのほうが野生型マウスよりも重症であったので、患部組織におけるLMIR3リガンドの存在が示唆される。LMIR3細胞外ドメインを含む融合タンパク質を用いた実験では、脂質のセラミドがLMIR3に結合することが示された。セラミドは、野生型BMMCによるFcεRI依存性の脱顆粒とIL-6放出をin vitroで抑制したが、LMIR3欠損型BMMCでは抑制しなかった。セラミド存在下でFcεRIを介して野生型BMMCを刺激すると、LMIR3のチロシンリン酸化、細胞膜におけるLMIR3およびFcεRIの共局在、FcεRIシグナル伝達を抑制するホスファターゼのLMIR3への動員が起こった。リポソームのセラミドで前処理をしたところ、野生型マウスでは、対照リポソームで前処理された野生型マウスに比べてアレルギー反応が低下したが、LMIR3欠損型マウスでは低下しなかった。共焦点顕微鏡解析によって、マウスの皮膚に細胞外セラミドが存在し、その存在量は炎症組織で増大することが示された。まとめると、今回のデータは、細胞外セラミドがマスト細胞の受容体LMIR3に結合すると、FcεRIシグナル伝達が抑制され、in vivoのアレルギー反応が低下することを示している。

J. F. Foley, Ceramide Keeps Mast Cells in Check. Sci. Signal. 5, ec302 (2012).

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2012年11月27日号

Editor's Choice

免疫学
セラミドはマスト細胞を抑制する

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Perspectives

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