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ペプチド結合ドメイン:弱々しい握手がもっとも安全?
Peptide-Binding Domains: Are Limp Handshakes Safest?
Sci. Signal., 25 September 2012
Vol. 5, Issue 243, p. pe40
[DOI: 10.1126/scisignal.2003372]
Niall J. Haslam and Denis C. Shields*
UCD Complex and Adaptive Systems Laboratory, UCD School of Medicine and Medical Sciences, and UCD Conway Institute of Biomolecular and Biomedical Research, University College Dublin, Belfield, Dublin 4, Ireland.
* Corresponding author. E-mail: denis.shields@ucd.ie
要約:タンパク質内の短いペプチドとペプチド結合ドメインとの相互作用は、数多くの重要な細胞シグナル伝達過程を誘導する可能性があり、これらの相互作用は一般に親和性が中程度である。この中程度の親和性が、進化の過程で好まれているとみられることが、ある研究によって示された。研究者らは、ファージディスプレイ選択法を利用して、天然に存在するSrc相同 2(SH2)ドメインよりもはるかに強い親和性でペプチドと結合する「スーパーバインダー」SH2ドメインを発見した。これらのスーパーバインダードメインは、細胞シグナル伝達の遮断などの強力な生物学的作用を示した。スーパーバインダーはより高い親和性を有したが、それによって特異性は低下しないようであった。対照的に、細菌性病原体に由来するSH2結合ペプチドは、哺乳動物細胞内への侵入の際にシグナル伝達を破壊するエフェクタータンパク質内に存在する複数のSH2ドメインに結合するという選択性の低さを示すように進化してきた。SH2ドメインのペプチドバインダーと考えられる配列は、多数のヒトタンパク質において数多く発見されているので、中程度の親和性は、可逆的相互作用によって媒介される一過性のシグナル伝達を最適化する可能性があるだけでなく、オフターゲットの有害な結合作用を最小限に抑える可能性もある。天然と人工の両方のドメインとペプチドについて、その特異性とオフターゲットの影響を、さらに詳細に評価する準備が整った。このことは、短いペプチドによって媒介される重要なシグナル伝達過程における治療的介入のための標的や試薬の解明に役立つ可能性がある。
N. J. Haslam, D. C. Shields, Peptide-Binding Domains: Are Limp Handshakes Safest? Sci. Signal. 5, pe40 (2012).