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EGF受容体がシグナルを伝える場所

Where EGF Receptors Transmit Their Signals

Perspectives

Sci. Signal., 25 September 2012
Vol. 5, Issue 243, p. pe41
[DOI: 10.1126/scisignal.2003341]

Nancy L. Lill1* and Nurettin Ilter Sever1

1 Department of Pathology and the OSU Comprehensive Cancer Center, Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA.

* Corresponding author. E-mail: nancy.lill@osumc.edu

要約:受容体チロシンキナーゼ(RTK)による過剰なシグナル伝達はがんの原因となりうる。どのような分子機構が通常はRTKシグナル伝達を制御しているのだろうか。腫瘍では、このような制御に欠陥があるのだろうか。もしそうであれば、がん細胞に対して特定の制御経路を回復させるような治療法を開発するべきだろうか。RTKの原型である上皮増殖因子受容体(EGFR)の機構研究を通じて、これらの問題について検討がなされてきた。EGFRシグナル伝達は、シグナル伝達のエフェクターと輸送のエフェクターの両方によって媒介され、調節を受ける。受容体−近位シグナル分子の大きさは、EGFRが分解輸送経路に沿って細胞表面からエンドソーム、そしてリソソーム内へと移動するにつれて変化する。受容体のもつ発がん性の治療による抑制を最適化するためには、輸送経路の特定の部位からシグナルを発しているEGFRを標的にすることがきわめて重要かもしれない。研究によって、細胞膜に存在するEGFRがEGFに対する包括的な転写応答を大部分を引き起こすことが示唆されている。経路内の細胞内移行と初期エンドソームとの融合の段階の間に位置するEGFRは、がんに関連する転写産物の発現を増強する。エンドソーム輸送選別複合体(ESCRT)複合体IIおよびIIIによる制御を受ける、後の輸送チェックポイントに存在するEGFRは、EGFRを介する転写応答にはそれほど寄与しない。これらの結果は、分解輸送経路の最初の段階の受容体を標的とする治療が最も有効である可能性を示唆する。

N. L. Lill, N. I. Sever, Where EGF Receptors Transmit Their Signals. Sci. Signal. 5, pe41 (2012).

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