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スーパーバインダーSH2ドメインは細胞シグナル伝達アンタゴニストとして作用する

Superbinder SH2 Domains Act as Antagonists of Cell Signaling

Research Article

Sci. Signal., 25 September 2012
Vol. 5, Issue 243, p. ra68
[DOI: 10.1126/scisignal.2003021]

Tomonori Kaneko1*, Haiming Huang2*, Xuan Cao1, Xing Li1, Chengjun Li1, Courtney Voss1, Sachdev S. Sidhu2†, and Shawn S. C. Li1†

1 Department of Biochemistry and Siebens-Drake Medical Research Institute, Schulich School of Medicine and Dentistry, University of Western Ontario, London, Ontario N6A 5C1, Canada.
2 Banting and Best Department of Medical Research and Department of Molecular Genetics, University of Toronto, Donnelly Centre, 160 College Street, Toronto, Ontario M5S 3E1, Canada.

* These authors contributed equally to this work.

† To whom correspondence should be addressed. E-mail: sachdev.sidhu@utoronto.ca (S.S.S.); sli@uwo.ca (S.S.C.L.)

要約:細胞機能調節において重要な役割を果たすことが多いモジュラードメインによって媒介されるタンパク質とリガンドの相互作用の親和性は、一般に中程度である。われわれはリン酸化チロシン(pTyr)残基を認識するモジュラードメインであるSrcホモロジー2(SH2)ドメインに関して、モジュラードメインとそのリガンドの結合親和性がタンパク質の構造および細胞機能に及ぼす影響について検討した。ファージディスプレイ法を用いて、チロシンキナーゼFynのSH2ドメインにおけるpTyr結合残基の指向進化実験を行なうことによって、結合に重要な影響を及ぼす3つのアミノ酸置換を特定した。天然のドメインと比べてpTyr含有ペプチドに対する親和性が格段に高い「スーパーバインダー」であるSH2ドメイン3点突然変異体を3種類作製した。これらのスーパーバインダーのうちの1つに関する結晶学的解析によって、スーパーバインダーSH2ドメインは、2分結合様式(疎水面がフェニル環を含み、正荷電部位がリン酸塩と結合する)でpTyr部分を認識することが明らかになった。哺乳類細胞にスーパーバインダーSH2ドメインを発現させると、上皮増殖因子受容体のシグナル伝達を遮断し、足場非依存性の細胞増殖を抑制したことから、pTyrスーパーバインダーの治療への適用、および生物学的研究ツールとしての有用性が示唆された。そのSH2ドメインフォールドは、天然のドメインに比べてはるかに高いリガンド親和性を支持するが、われわれの結果は、天然のSH2ドメインがリガンド結合に関して最適化されているのではなく、シグナル伝達および制御プロセスにおけるそれらの機能に重要と考えられる特性であると考えられる、特異性と柔軟性に関して最適化されていると考えられる。

T. Kaneko, H. Huang, X. Cao, X. Li, C. Li, C. Voss, S. S. Sidhu, S. S. C. Li, Superbinder SH2 Domains Act as Antagonists of Cell Signaling. Sci. Signal. 5, ra68 (2012)

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