• ホーム
  • ジアシルグリセロールキナーゼのζアイソフォームは制御性T細胞の発生とTCR介在性Rasシグナル伝達において重要な役割を果たす

ジアシルグリセロールキナーゼのζアイソフォームは制御性T細胞の発生とTCR介在性Rasシグナル伝達において重要な役割を果たす

The ζIsoform of Diacylglycerol Kinase Plays a Predominant Role in Regulatory T Cell Development and TCR-Mediated Ras Signaling

Research Article

Sci. Signal., 26 November 2013
Vol. 6, Issue 303, p. ra102
[DOI: 10.1126/scisignal.2004373]

Rohan P. Joshi1, Amanda M. Schmidt2, Jayajit Das3, Dariusz Pytel1, Matthew J. Riese1, Melissa Lester1, J. Alan Diehl1, Edward M. Behrens4, Taku Kambayashi2, and Gary A. Koretzky1,5*†

1 Abramson Family Cancer Research Institute, Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA 19104, USA.
2 Department of Pathology and Laboratory Medicine, Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA 19104, USA.
3 Battelle Center for Mathematical Medicine, The Research Institute at the Nationwide Children’s Hospital, and Departments of Pediatrics, Physics, and Biophysics, The Ohio State University, Columbus, OH 43205, USA.
4 The Children’s Hospital of Philadelphia, Philadelphia, PA 19104, USA.
5 Department of Medicine, Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA 19104, USA.

† Present address: Department of Medicine, Weill Cornell Medical College, New York, NY 10065, USA.

* Corresponding author. E-mail: koretzky@mail.med.upenn.edu

要約

ジアシルグリセロール(DAG)は、T細胞受容体(TCR)に刺激されるシグナル伝達を媒介する重要なセカンドメッセンジャーである。ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は、DAGからホスファチジン酸(PA)への変換を触媒するので、DAGの存在量を減少させ、ひいてはDAGに媒介されるシグナル伝達を抑制する。T細胞内の主要なDGKアイソフォームはDGKαとDGKζであり、DGKαまたはDGKζをコードする遺伝子を欠失させると、DAGに媒介されるシグナル伝達が亢進される。われわれは、内在性制御性T(Treg)細胞の発生をDGKζは抑制するが、DGKαは抑制せず、TCR下流のRasシグナル伝達とAktシグナル伝達を主に調節しているのがDGKαではなくDGKζであることを発見した。そのようなDGKαとDGKζの機能の差は、T細胞におけるタンパク質量の違いによるものでも、T細胞と抗原提示細胞の結合部位への局在化の違いによるものでもなかった。RasGRP1はRasシグナル伝達におけるDAG媒介性の主要な活性化因子であるが、DGKαよりもDGKζとより強く結合した。しかし、TCR刺激によるRas活性化のin silicoモデルでは、この2つのDGKアイソフォームの機能に差を生じさせるには、RasGRP1結合親和性の差は十分でないことが示された。むしろ、DGKαの触媒反応速度よりDGKζの触媒反応速度のほうが大きいために、DGKαよりDGKζのほうがRas媒介シグナル伝達をより強く抑制するのかもしれないことが示唆された。この考えと一致するように、実験研究では、DGKαよりDGKζのほうが、TCR刺激後のDAGからPAへの代謝を効率よく触媒することが実証された。このように、Treg細胞の発生の調節においてDGKζが優性に機能する根底にある機構の1つとして、DGKζによる触媒効率のより高いPA産生が考えられる。

R. P. Joshi, A. M. Schmidt, J. Das, D. Pytel, M. J. Riese, M. Lester, J. A. Diehl, E. M. Behrens, T. Kambayashi, G. A. Koretzky, The ζIsoform of Diacylglycerol Kinase Plays a Predominant Role in Regulatory T Cell Development and TCR-Mediated Ras Signaling. Sci. Signal. 6, ra102 (2013).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2013年11月26日号

Editor's Choice

炎症
ショッキングな応答

Research Article

ジアシルグリセロールキナーゼζはナチュラル制御性T細胞の産生を制限する

ジアシルグリセロールキナーゼのζアイソフォームは制御性T細胞の発生とTCR介在性Rasシグナル伝達において重要な役割を果たす

最新のResearch Article記事

2024年2月27日号

ALOX5はCD4+ T細胞のパイロトーシスと関節リウマチにおける組織炎症を駆動する

2024年2月20日号

デザイナー高密度リポタンパク質粒子が内皮バリア機能を強化し炎症を抑制する

T細胞におけるgp130シグナル伝達の活性化がTH17介在性の多臓器自己免疫を引き起こす

2024年2月13日号

GPCRキナーゼはその細胞内局在に応じて偏向性のCXCR3下流シグナル伝達を差次的に調節する

リラキシン-3受容体のGαi/oバイアスステープルペプチドアゴニストによるバイアスアゴニズムの機構