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Ca2+放出の開始に必要なイノシトール1,4,5-三リン酸結合の化学量論を明らかにする
Defining the stoichiometry of inositol 1,4,5-trisphosphate binding required to initiate Ca2+ release
Sci. Signal. 05 Apr 2016:
Vol. 9, Issue 422, pp. ra35
DOI: 10.1126/scisignal.aad6281
Kamil J. Alzayady1, Liwei Wang1, Rahul Chandrasekhar1, Larry E. Wagner II1, Filip Van Petegem2, and David I. Yule1,*
1 Department of Pharmacology and Physiology, University of Rochester, Rochester, NY 14642, USA.
2 Department of Biochemistry and Molecular Biology, University of British Columbia, Vancouver, British Columbia V6T 1Z3, Canada.
* Corresponding author. E-mail: david_yule@urmc.rochester.edu
要約 イノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)受容体(IP3R)は、四量体細胞内Ca2+放出チャネルで、各サブユニットのアミノ末端にIP3の結合部位が存在する。われわれは、さまざまな条件下でこのチャネルを活性化させるには、4つのIP3分子が必要であるという証拠を示す。結合とCa2+放出の濃度反応関係を比較すると、実質的なCa2+放出が起こる前に、IP3RはIP3によって最大限に占有されていることが示唆された。われわれは、IP3Rサブユニットをコードする3つの遺伝子すべてを欠損したニワトリ免疫細胞株DT40-3KOにおいて、リガンド結合欠損サブユニットが、野生型単量体と共発現した場合に、ドミナントネガティブ的に作用することを示し、CRISPR/Cas9技術により作製したIP3R欠損ヒト細胞株(HEK-3KO)において、同様の作用を確認した。さらに、結合欠損サブユニットの数を増やした二量体および四量体連結IP3Rを用いて、絶対的リガンド化学量論を検討した。4つのリガンド結合部位をもつ連結IP3Rでは、ネイティブなIP3RのCa2+放出と電気生理学的特性が認められた。しかし、結合能をもつサブユニット1つと結合を欠損した変異サブユニット1つで構成される連結二量体から組み立てられたIP3Rは、IP3によって活性化されなかった。同様に、IP3結合を欠損したスプライスバリアントであるIP3R2shortの単量体を2つ含有するIP3Rは、機能しなかった。結合能のあるリガンド結合部位を3つしかもたない連結四量体は、さまざまな活性化条件下で機能しなかった。これらのデータは、IP3誘導性のCa2+放出が、四量体の中のIP3R単量体それぞれがIP3によって占有される場合にのみ発生し、それによりCa2+放出の忠実性が確保されることを示す、明確な証拠となる。
Citation: K. J. Alzayady, L. Wang, R. Chandrasekhar, L. E. Wagner II, F. Van Petegem, D. I. Yule, Defining the stoichiometry of inositol 1,4,5-trisphosphate binding required to initiate Ca2+ release. Sci. Signal. 9, ra35 (2016).