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標的療法に対するKRAS変異アレル特異的な反応のシステム機構

A systems mechanism for KRAS mutant allele-specific responses to targeted therapy

Research Article

Sci. Signal. 24 Sep 2019:
Vol. 12, Issue 600, eaaw8288
DOI: 10.1126/scisignal.aaw8288

Thomas McFall1, Jolene K. Diedrich2,3, Meron Mengistu4, Stacy L. Littlechild1, Kendra V. Paskvan1, Laura Sisk-Hackworth1, James J. Moresco2, Andrey S. Shaw4, and Edward C. Stites1,*

1 Integrative Biology Laboratory, Salk Institute for Biological Studies, La Jolla, CA 92037, USA.
2 Mass Spectrometry Core for Proteomics and Metabolomics, Salk Institute for Biological Studies, La Jolla, CA 92037, USA.
3 Department of Molecular Medicine, The Scripps Research Institute, La Jolla, CA 92037, USA.
4 Department of Research Biology, Genentech, South San Francisco, CA 94080, USA.

* Corresponding author. Email: estites@salk.edu

要約

がん治療法は、各患者の腫瘍内でどの特異的遺伝子が変異しているかによって決定されることが増えてきている。たとえば、上皮増殖因子受容体(EGFR)を阻害する薬剤は、多くの結腸直腸がん(CRC)患者に有益であるが、腫瘍にKRAS変異が認められた患者は一般的に例外とされる。ところが、多様なKRAS変異のうち、G13D変異タンパク質(KRASG13D)をコードするKRAS変異は振る舞いが異なる。理由は不明ながら、KRASG13D型CRC患者はEGFRを阻害する抗体であるセツキシマブによる恩恵を受ける。この知見は、RAS変異が関わるEGFRシグナル伝達の十分に確立された機構と矛盾することから、議論を呼んでいる。本稿でわれわれは、KRASG13DがんがEGFR阻害に反応する理由について、システムレベルで機構的に説明できることを確認した。RASシグナル伝達の計算モデルでは、とくに頻度の高い3つのKRAS変異間の生物物理学的な差が、EGFR阻害に対する感受性の差を生むための十分条件であることが明らかにされた。さらに、実験と計算の結果を合わせると、EGFRによる野生型RASの活性化が直観に反して変異特異的な依存性を示し、これはKRASと腫瘍抑制因子ニューロフィブロミン(NF1)との間の相互作用強度によって決定されることが明らかにされた。NF1と強く相互作用してNF1を競合的に阻害するKRAS変異体は、野生型RASの活性化をEGFR非依存的に駆動したが、KRASG13DはNF1との相互作用が弱く、NF1を競合的に阻害することができず、そのためKRASG13D細胞は野生型RASの活性に関してEGFRに依存的なままであった。全体としてわれわれの研究は、システム的アプローチによって、ゲノム医療における機構ベースの推測が可能になり、選択的な治療戦略に適した患者の同定を支援できることを示している。

Citation: T. McFall, J. K. Diedrich, M. Mengistu, S. L. Littlechild, K. V. Paskvan, L. Sisk-Hackworth, J. J. Moresco, A. S. Shaw, E. C. Stites, A systems mechanism for KRAS mutant allele-specific responses to targeted therapy. Sci. Signal. 12, eaaw8288 (2019).

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