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リジン特異的デメチラーゼ1を標的とすることによりキナーゼネットワークが再配線されキナーゼ阻害剤治療に対して白血病細胞がプライミングされる

Targeting the lysine-specific demethylase 1 rewires kinase networks and primes leukemia cells for kinase inhibitor treatment

Research Article

SCIENCE SIGNALING
19 Apr 2022 Vol 15, Issue 730
DOI: 10.1126/scisignal.abl7989

Federico Pedicona1,†, Pedro Casado1,†, Maruan Hijazi1,†, John G. Gribben2, Kevin Rouault-Pierre2, Pedro R. Cutillas1,3,*

  1. 1 Cell Signaling and Proteomics Group, Centre for Cancer Genomics and Computational Biology, Barts Cancer Institute, Queen Mary University of London, John Vane Science Centre, Charterhouse Square, London EC1M 6BQ, UK.
  2. 2 Centre for Haemato-Oncology, Barts Cancer Institute, Queen Mary University of London, John Vane Science Centre, Charterhouse Square, London EC1M 6BQ, UK.
  3. 3 Alan Turing Institute, British Library, 2QR, 96 Euston Road, London NW1 2DB, UK.

* Corresponding author. Email: p.cutillas@qmul.ac.uk

† These authors contributed equally to this work.

AMLをキナーゼ阻害剤に対して感作する

一部の急性骨髄性白血病(AML)細胞には、MEKキナーゼ経路を活性化する変異があるが、MEK阻害剤は一般にこのがんの治療に効果がない。Pediconaらは、患者由来のAML細胞および細胞株における薬物スクリーニングとリン酸化プロテオーム分析を統合し、キナーゼネットワーク活性をエピジェネティックマーカーおよびキナーゼ阻害剤感受性と相関させた。これらのエピジェネティックマーカーの1つであるリジン特異的デメチラーゼ1(LSD1)を生成する酵素を阻害すると、MEK経路の活性が高まるのに対し、他のキナーゼの活性が大幅に抑制され、細胞はMEK阻害剤によるその後の治療に感受性をもった。これらの知見は、AMLの一部に対する潜在的な治療戦略を明らかにし、活性化されたMEKシグナル伝達が、現在AML患者で試験されているLSD1阻害剤に対する耐性の原因である可能性を示唆する。

要約

ほとんどの腫瘍タイプは、多くの場合、がん細胞のより広範なシグナル伝達回路における代償性の生存促進経路が原因で、キナーゼ阻害剤に反応しないか、耐性を示す。ここでは、初代培養急性骨髄性白血病(AML)細胞におけるキナーゼ阻害剤に対する固有の耐性が、キナーゼネットワークを、薬剤感受性を与えるトポロジーに再形成することによって克服される可能性があることを発見した。われわれは、AML細胞株をキナーゼ阻害剤に感作させるクロマチン修飾酵素のいくつかのアンタゴニストを同定した。これらのうち、リジン特異的デメチラーゼ(LSD1; KDM1Aとしても知られる)の阻害剤が、キナーゼMEKの活性を増加させ、他のキナーゼとフィードバックループの活性を広く抑制する方法でAML細胞のキナーゼシグナル伝達を再配線することを確認した。その結果、AML細胞株と初代培養ヒトAMLサンプルの約半分がMEK阻害剤トラメチニブに対する感受性についてプライミングされた。KRAS変異を有する初代培養ヒト細胞およびMEK経路活性が高い細胞は、LSD1阻害剤、次にトラメチニブによる連続治療に対する最良の応答者であったが、NRAS変異およびmTOR活性が高い細胞は応答性が低かった。全体として、われわれの研究は、AMLにおけるLSD1阻害剤に対する耐性の機構としてのMEK経路を明らかにし、キナーゼネットワーク回路を調節してキナーゼ阻害剤に対する治療的耐性を潜在的に克服する方法を示す。

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