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変形性関節症ではlncRNA PILAがタンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼPRMT1の活性を刺激することによりNF-κBシグナル伝達を促進する

The lncRNA PILA promotes NF-κB signaling in osteoarthritis by stimulating the activity of the protein arginine methyltransferase PRMT1

Research Article

SCIENCE SIGNALING
24 May 2022 Vol 15,Issue 735
DOI: 10.1126/scisignal.abm6265

Su'an Tang1,2,†, Yumei Cao1,†, Zhaopeng Cai3,†, Xiaoyu Nie1, Jianzhao Ruan1, Zuoqing Zhou1,4, Guangfeng Ruan1, Zhaohua Zhu1,2,*, Weiyu Han1,2,*, Changhai Ding1,5,*

  1. 1 Clinical Research Centre, Zhujiang Hospital, Southern Medical University, 510280 Guangzhou, Guangdong, China.
  2. 2 Centre of Orthopedics, Zhujiang Hospital, Southern Medical University, 510280 Guangzhou, Guangdong, China.
  3. 3 Department of Orthopedics, Eighth Affiliated Hospital, Sun Yat-sen University, 518033 Shenzhen, Guangdong, China.
  4. 4 Department of Orthopedics, First Affiliated Hospital, Shaoyang University, 422099 Shaoyang, Hunan, China.
  5. 5 Menzies Institute for Medical Research, University of Tasmania, 7000 Hobart, Tasmania, Australia.

* Corresponding author. Email: changhai.ding@utas.edu.au (C.D.); weiyu.han@utas.edu.au (W.H.); zhaohua.zhu@utas.edu.au (Z. Zhu)

† These authors contributed equally to this work.

lncRNAによる関節の変形

核内因子κB(NF-κB)シグナル伝達は、軟骨分解と関節炎を促進することによって変形性関節症(OA)の発症と増悪に関与する。Tangらは、OAにおいて長鎖型ノンコーディングRNAであるPILAがNF-κBシグナル伝達を刺激することを明らかにした。ヒト関節軟骨細胞では、PILAがタンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼPRMT1と相互作用してその活性を促進させた。RNAヘリカーゼDHX9をPRMT1によって修飾すると、NF-κBの活性化を促進するキナーゼをコードするTAK1の発現が増加した。PILAは、ヒトOA軟骨で存在量が増加しており、関節軟骨細胞で炎症誘導性の細胞外基質分解を促進した。マウス膝関節でPILAを発現させると、自発性の軟骨分解が刺激され、実験的に誘導されるOAが促進された。まとめると、これらの知見は、OAにおいてNF-κBシグナル伝達を増強することによって関節の軟骨分解を促進し、炎症誘導性関節損傷を増悪させる因子として、PILAを同定するものである。

要約

炎症性サイトカインに誘導される核内因子κB(NF-κB)シグナル伝達の活性化は、変形性関節症(OA)の発病においてきわめて重要な役割を担っている。われわれは、NF-κBシグナル伝達とOAを促進する長鎖型ノンコーディングRNA(lncRNA)としてPILAを同定した。OA患者由来の損傷軟骨と、炎症性サイトカインの腫瘍壊死因子(TNF)によって刺激されたヒト関節軟骨細胞では、PILA量が増加していた。軟骨細胞のPILAをノックダウンすると、TNFに誘導されるNF-κBシグナル伝達、細胞外基質の異化反応、アポトーシスが阻害され、一方で、PILAを異所的に発現させると、NF-κBシグナル伝達と細胞外基質の分解が促進された。PILAは、PRMT1を介したDExH-boxヘリカーゼ9(DHX9)のアルギニンメチル化を促進し、NF-κBシグナル伝達の上流の活性化因子であるトランスフォーミング増殖因子β活性化キナーゼ1(TAK1)をコードする遺伝子の転写量増加を引き起こした。さらに、マウスにおいてPILAをコードするアデノウイルスベクターを関節内注射すると、自発的な軟骨減少が引き起こされ、外傷後OAが増悪した。この研究は、OAにおけるNF-κBシグナル伝達の調節について洞察を与え、この疾患の考えうる治療標的を同定するものである。

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