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TGF-β経路とBMP経路の協調的活性化によってアセトアミノフェン中毒後のオートファジーが促進され、肝障害が抑制される

Coordinated activation of TGF-β and BMP pathways promotes autophagy and limits liver injury after acetaminophen intoxication

Research Article

SCIENCE SIGNALING
28 Jun 2022 Vol 15, Issue 740
DOI: 10.1126/scisignal.abn4395

Athanasios Stavropoulos1, Georgios Divolis1, Maria Manioudaki1, Ariana Gavriil1, Ismini Kloukina2, Despina N. Perrea3, Alexandros Sountoulidis1, Ethan Ford2, Athanasia Doulou1, Anastasia Apostolidou1, Elena Katsantoni2, Olli Ritvos4, Georgios Germanidis5, Maria Xilouri1, Paschalis Sideras1,*

  1. 1 Center for Clinical, Experimental Surgery and Translational Research, Biomedical Research Foundation of the Academy of Athens, Athens, Greece.
  2. 2 Center of Basic Research, Biomedical Research Foundation of the Academy of Athens, Athens, Greece.
  3. 3 Laboratory of Experimental Surgery and Surgical Research N.S. Christeas, Athens University Medical School, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece.
  4. 4 Department of Bacteriology and Immunology and Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Helsinki, Helsinki, Finland.
  5. 5 First Department of Internal Medicine, AHEPA Hospital, Aristotle University of Thessaloniki, School of Medicine, Thessaloniki, Greece.

* Corresponding author. Email: sideras@bioacademy.gr

肝臓の修復と再生のバランスを取る

近縁のサイトカインであるTGF-βとBMPは、肝障害において、特異的なリガンドや障害の種類に応じて、保護作用または有害な作用を及ぼす。Stavropoulosらは、TGF-βシグナル伝達とBMPシグナル伝達の両方のレポーターを発現するマウスを用いて、アセトアミノフェン誘発肝障害に反応したこれらの経路の寄与を検討した。両経路が肝細胞の壊死部位の近傍で誘導され、オートファジーの増加も認められた。TGF-β経路とBMP経路は、オートファジーの律速因子であるTrp53inp2をコードする遺伝子の発現を促進することによって、オートファジーを協調的に活性化した。両経路を通るシグナル伝達を阻害すると、初期にはアセトアミノフェン誘発性の肝障害が悪化したが、最終的には組織の再生と回復が促進された。トランスクリプトーム解析により、これら2つの経路によって類似の方向または逆方向に調節される標的が同定され、肝臓の障害と修復におけるこれら2つのシグナル伝達系の相互作用の複雑さが強調された。

要約

トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、アクチビン、骨形成タンパク質(BMP)を含むTGF-βスーパーファミリーのリガンドは、肝臓の発生、恒常性、病態生理に関与している。われわれは、肝細胞が、TGF-βおよびアクチビン(TGF-β/Activin)とBMPからの障害誘導性のシグナル伝達を解読し、統合する機構を検討した。TGF-β/Activinシグナル伝達の蛍光レポーターとBMPシグナル伝達の蛍光レポーターを有するデュアルレポーターマウスにおいて、アセトアミノフェン(APAP)により誘発された肝障害時の経路活性化の時空間的パターンをマッピングした。APAP中毒によって、組織損傷部位近傍の細胞の領域において両レポーターの発現が誘導され、オートファジーの増加が示され、健常な組織と損傷した組織との境界が画定された。阻害剤Smad7の過剰発現によりTGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達を阻害すると、急性的な肝臓の組織病変が悪化したが、最終的には組織の回復を早めた。トランスクリプトーム解析により、肝細胞においてTGF-β1とBMP4によって刺激される過程としてオートファジーが同定され、オートファジー開始の律速因子をコードするTrp53inp2が、もっとも高度に誘導されるオートファジー関連遺伝子として同定された。総合すると、これらの結果は、TGF-βスーパーファミリーシグナル伝達系の機能的な相互接続性を説明し、TGF-β/Activin経路とBMP経路の協調的活性化がAPAP誘発肝毒性における組織の修復過程と再生過程のバランス維持に関与することを示し、肝疾患の治療としてこのシグナル伝達系を標的とすることに伴う機会と潜在的リスクを強調している。

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