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オメガ-3ヒドロキシ脂肪酸の7(S)-HDHAは、脳ニューロンの形態を制御する高親和性のPPARαリガンドである

The omega-3 hydroxy fatty acid 7(S)-HDHA is a high-affinity PPARα ligand that regulates brain neuronal morphology

Research Article

SCIENCE SIGNALING
5 Jul 2022 Vol 15, Issue 741
DOI: 10.1126/scisignal.abo1857

Jiabao Liu1, Cigdem Sahin2, Samar Ahmad3, Lilia Magomedova2, Minhao Zhang4, Zhengping Jia5,6, Adam H. Metherel7, Arturo Orellana4, Gennady Poda2,8, Richard P. Bazinet7, Liliana Attisano3, Carolyn L. Cummins2, Hui Peng9,10,*, Henry M. Krause1,11,*

  1. 1 Donnelly Centre for Cellular and Biomolecular Research, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3E1, Canada.
  2. 2 Department of Pharmaceutical Sciences, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3M2, Canada.
  3. 3 Department of Biochemistry, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3E2.
  4. 4 Department of Chemistry, York University, Toronto, ON M3J 1P3, Canada.
  5. 5 Neurosciences and Mental Health, The Hospital for Sick Children, Toronto, ON M5G 1X8, Canada.
  6. 6 Department of Physiology, University of Toronto, Toronto, ON M5S 1A8, Canada.
  7. 7Department of Nutritional Sciences, Faculty of Medicine, University of Toronto, Toronto, ON, Canada.
  8. 8 Drug Discovery, Ontario Institute for Cancer Research, Toronto, ON M5G 0A3, Canada.
  9. 9Department of Chemistry, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3H6, Canada.
  10. 10 School of the Environment, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3H6, Canada.
  11. 11Department of Molecular Genetics, University of Toronto, Toronto, ON M5S 1A8, Canada.

* Corresponding author. Email: h.krause@utoronto.ca (H.M.K.); hui.peng@utoronto.ca (H.P.)

活動的な脳のためのオメガ-3

マウスにおいて核受容体PPARαの活性化は神経を保護し記憶を強化する。Liuらは、これらの作用を促進する可能性がある脳内の内因性PPARαリガンドを発見した。げっ歯類の脳のライセートを用いたプロテオミクス解析および生物物理学的アッセイから、オメガ-3脂肪酸DHAのヒドロキシル化誘導体である7(S)-HDHAが高親和性でPPARαと結合することを明らかにした。初代培養皮質ニューロンを7(S)-HDHAで処理すると樹状突起の伸長および分枝が促進されたほか、シナプス可塑性と関連するPPARαの標的遺伝子の発現が亢進した。幼若な雄ラットの餌にDHAを添加すると、皮質中の7(S)-HDHA量が増加した。これらの知見は、オメガ-3脂肪酸が脳内のシナプス機能をサポートするという考えをさらに裏付けるものであり、食事によるDHA摂取のそのような有益性の根底にある潜在的機構を示している。

要約

核受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)は、認知障害の治療または予防のための脳内の重要な標的として注目を集めている。脳内のPPARαに対する高親和性リガンドを同定することで、シナプスにおけるこの受容体の作用の根底にある機構が明らかになり、医薬品開発が加速されると考えられる。本稿でわれわれはアフィニティー精製‐非標的質量分析(AP-UMS)法を用い、内因性の選択的PPARαリガンドである7(S)-ヒドロキシ-ドコサヘキサエン酸[7(S)-HDHA]を同定した。質量分析によるマウスおよびラット脳組織中の7(S)-HDHAの検出、時間分解FRET解析、およびサーマルシフトアッセイの結果を合わせ、7(S)-HDHAは、現在までに同定されている他のリガンドと比較して高い親和性で結合してPPARαを強力に活性化する可能性があることが明らかにされた。また、マウスの培養皮質ニューロンにおいて7(S)-HDHAによりPPARαを活性化することで、ニューロンの成長および分枝、並びにシナプス可塑性と関連する遺伝子の発現が刺激されることを発見した。これらの知見は、このDHA誘導体が脳内でニューロンのシナプス容量を支え、増強することを示唆している。

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