• ホーム
  • CD9は膵臓がん細胞の攻撃性を促進するがん関連線維芽細胞からの細胞外小胞の取り込みを媒介する

CD9は膵臓がん細胞の攻撃性を促進するがん関連線維芽細胞からの細胞外小胞の取り込みを媒介する

CD9 mediates the uptake of extracellular vesicles from cancer-associated fibroblasts that promote pancreatic cancer cell aggressiveness

Research Article

SCIENCE SIGNALING
2 Aug 2022 Vol 15, Issue 745
DOI: 10.1126/scisignal.abg8191

Jérémy Nigri1, Julie Leca1,2, Sarah-Simha Tubiana1, Pascal Finetti1, Fabienne Guillaumond1, Sébastien Martinez1,3, Sophie Lac1, Juan L. Iovanna1, Stéphane Audebert1,4, Luc Camoin1,4, Sophie Vasseur1, François Bertucci1,5, Richard Tomasini1,*

  1. 1 INSERM, U1068, Cancer Research Center of Marseille, Institut Paoli-Calmettes, CNRS, UMR7258, University Aix-Marseille, Marseille, France.
  2. 2 Princess Margaret Cancer Centre, University Health Network, Toronto, ON, Canada.
  3. 3 Centre for Molecular and Systems Biology, Lunenfeld-Tanenbaum Research Institute, Mount Sinai Hospital, Toronto, ON, Canada.
  4. 4 Aix-Marseille Univ, INSERM, CNRS, Institut Paoli- Calmettes, CRCM, Protéomique, Marseille, France.
  5. 5 Department of Medical Oncology, Institut Paoli-Calmettes, Marseille, France.

* Corresponding author. Email: richard.tomasini@inserm.fr

CD9はCAF由来の腫瘍形成パッケージをタグ付けする

膜タンパク質 ANXA6 を含む膵臓がん関連線維芽細胞 (CAF) から放出される細胞外小胞 (EV) は、腫瘍において侵襲性な表現型を誘発する。膵管がん(PDAC)の患者試料とPDACのマウスモデルからのANXA6陽性およびANXA6欠損CAFから単離されたEVを比較することにより、Nigriらは、細胞表面糖タンパク質CD9がANXA6陽性EVの取り込みを媒介することを発見した。単離されたEVでCD9を遮断する、または、PDAC細胞でキナーゼp38を阻害すると、ANXA6陽性EVが細胞移動と間葉タンパク質シグネチャを誘導するのを妨げた。CD9が腫瘍の悪性度と相関し、患者の予後不良を予測したことを考えると、これらの知見は、間質CD9検出がPDAC患者の疾患進行を遅らせるための治療介入に役立つ可能性があることを示唆している。

要約

膵管腺がん (PDAC) では、間質細胞からのシグナル伝達が転移の進行に関与している。腫瘍間質クロストークは、多くの場合、細胞外小胞 (EV) により媒介される。これまで、アネキシンA6が豊富ながん関連間質線維芽細胞 (CAF) に由来する EV (ANXA6+ EV)が、PDAC における腫瘍細胞の攻撃性を支持することを報告した。ここでは、細胞表面糖タンパク質テトラスパニンCD9が、このクロストークを仲介するCAF由来ANXA6+ EV の重要な構成要素であることを発見した。CD9は、患者のPDAC試料およびさまざまなPDACマウスモデルから単離されたANXA6+ CAFの表面に豊富に存在していた。CD9は腫瘍間質のCAFマーカーと共局在し、CD9の存在量は腫瘍病期と相関していた。CD9を遮断すると、培養PDAC細胞へのANXA6+ EVの取り込みが損なわれた。シグナル伝達経路アレイとさらなる解析により、CD9+ ANXA6+ EVの取り込みが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性、細胞移動、および上皮間葉転換(EMT)を誘導することが明らかになった。CD9 または p38 MAPKシグナル伝達のいずれかを遮断すると、PDAC細胞における CD9+ANXA6+ EV誘導性細胞移動とEMTが損なわれた。バイオインフォマティクスデータセットの解析により、CD9の存在量が PDAC患者の予後不良の独立したマーカーであることが示された。われわれの知見は、CD9を介した間質細胞シグナル伝達がPDACの進行を促進することを示唆している。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2022年8月2日号

Editor's Choice

抗生物質誘発性の炎症

Research Article

CD9は膵臓がん細胞の攻撃性を促進するがん関連線維芽細胞からの細胞外小胞の取り込みを媒介する

最新のResearch Article記事

2024年4月9日号

前立腺がんにおいて脂質合成を阻害するとDNA損傷が誘導され、PARP阻害がもたらす細胞死が増加する

A型インフルエンザウイルス感染中にMiz1がI型インターフェロンの産生を抑制してウイルス除去を制限する

2024年4月2日号

フェリチンの重サブユニットは肝星細胞でICAM-1を介してNLRP3インフラマソームを刺激し、肝臓の炎症を促進する

2024年3月26日号

ミクログリア内のグルコシルセラミドの蓄積がマウスにおいてSTING依存性の神経炎症と神経変性を引き起こす

2024年3月19日号

運動によって誘導されるBDNFは運動後回復期に骨格筋脂質代謝のPPARδ依存性リプログラミングを促進する