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フソバクテリウムヌクレアタムは宿主のオートクリンおよびパラクリンシグナル伝達を介して膵臓がん細胞の増殖と移動を誘導する

Fusobacterium nucleatum induces proliferation and migration in pancreatic cancer cells through host autocrine and paracrine signaling

Research Article

SCIENCE SIGNALING
18 Oct 2022 Vol 15, Issue 756
DOI: 10.1126/scisignal.abn4948

Barath Udayasuryan1, Raffae N. Ahmad1, Tam T. D. Nguyen2, ArianaUmaña2, LaDeidra Monét Roberts1, Polina Sobol1, Stephen D. Jones1, Jennifer M. Munson1,3, Daniel J. Slade2, Scott S. Verbridge1,3,*

  1. 1 Departmentof Biomedical Engineering and Mechanics, Virginia Tech, Blacksburg, VA 24061, USA.
  2. 2 Departmentof Biochemistry, Virginia Tech, Blacksburg, VA 24061, USA.
  3. 3 Comprehensive Cancer Center, Wake Forest University School of Medicine, Winston-Salem, NC 27157, USA.

* Corresponding author. Email: sverb@vt.edu

腫瘍原性感染症

腫瘍関連マイクロバイオームは、腫瘍の発生と進行に寄与しうる。Udayasuryanらは、日和見病原体になりうる口腔共生生物であるフソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)が、膵管腺がん(PDAC)細胞における腫瘍の進行に関連する活性を促進することを発見した。フソバクテリウムヌクレアタムのさまざまな亜種による感染は、ヒトPDAC細胞株で増殖、移動、および浸潤を促進するサイトカインの放出を誘発したが、正常なヒト膵臓上皮細胞ではこれらは見られなかった。分泌されたサイトカインの1つであるGM-CSFを遮断する抗体により、増殖は妨げられた。これらの知見は、PDACの進行を促進する可能性のある宿主-微生物相互作用を明らかにし、それにより、予後と治療介入のための臨床戦略に情報を提供する可能性がある。

要約

腫瘍マイクロバイオームが、がんの進行と化学療法に対する耐性へ関与していることが、次第に明らかにされている。膵管腺がん(PDAC)では、フソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)の高い腫瘍内負荷が患者の生存期間の短縮と相関している。ここでは、この関連の潜在的な機構を調べた。フソバクテリウムヌクレアタム感染は、正常な膵臓上皮細胞とPDAC細胞の両方で、サイトカインGM-CSF、CXCL1、IL-8、およびMIP-3αの分泌量増加を誘導することを発見した。これらのサイトカインは、感染したPDAC細胞と感染していないPDAC細胞の両方で増殖、遊走、浸潤性の細胞運動性を増加させたが、非がん性膵臓上皮細胞では増加させず、PDAC細胞へのオートクリンおよびパラクリンシグナル伝達を示唆した。この現象は、フソバクテリウムヌクレアタムの菌株に関係なく、免疫細胞や他の間質細胞が存在しない状態で、感染に応答して発生した。GM-CSFシグナル伝達を遮断すると、感染後の増殖性向上が著しく制限された。したがって、膵臓におけるフソバクテリウムヌクレアタム感染は、腫瘍の進行に関連するPDAC細胞の表現型を促進するサイトカイン分泌を正常細胞とがん細胞の両方から誘発する。これらの知見は、将来の治療介入の指針として、膵臓がんにおける宿主微生物相互作用を調べることの重要性を支持する。

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2022年10月18日号

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