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PknBおよびStpによるセリン・スレオニンリン酸化調節が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の静止状態と抗生物質耐性に関与している

Serine-threonine phosphoregulation by PknB and Stp contributes to quiescence and antibiotic tolerance in Staphylococcus aureus

Research Article

SCIENCE SIGNALING
3 Jan 2023 Vol 16, Issue 766
DOI: 10.1126/scisignal.abj8194

Markus Huemer1,†, Srikanth Mairpady Shambat1,†, Sanne Hertegonne1,‡, Judith Bergada-Pijuan1,‡, Chun-Chi Chang1, Sandro Pereira1, Alejandro Gómez-Mejia1, Lies Van Gestel1, Julian Bär1, Clément Vulin1, Sibylle Pfammatter2, Timothy P. Stinear3, Ian R. Monk3, Jonathan Dworkin4, Annelies S. Zinkernagel1,*

  1. 1 Department of Infectious Diseases and Hospital Epidemiology, University Hospital Zurich, University of Zurich, Zurich, Switzerland.
  2. 2 Functional Genomics Center Zurich, ETH/University of Zurich, Zurich, Switzerland.
  3. 3 Department of Microbiology and Immunology, Peter Doherty Institute for Infection and Immunity, University of Melbourne, Melbourne, Victoria, Australia.
  4. 4 Department of Microbiology and Immunology, College of Physicians and Surgeons, Columbia University, New York, NY, USA.

These authors contributed equally to this work.

These authors contributed equally to this work.

* Corresponding author. Email: annelies.zinkernagel@usz.ch

細菌はセリン・スレオニンリン酸化で生残する

非増殖性または低増殖性の生残菌細胞の亜集団は、特異的な耐性機構がなくても、抗生物質処理に対する細菌の生存を可能にする。Huemerらは、抗生物質感受性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)において、キナーゼPknBおよびホスファターゼStpを介したセリン・スレオニンリン酸化調節が担う役割を調べた。宿主組織内で黄色ブドウ球菌が経験する環境に類似した酸性条件下では、増殖が遅くなり、抗生物質耐性、PknBの活性化、増殖、タンパク質翻訳、代謝に関与する多様なタンパク質のセリン・スレオニンリン酸化が促進された。Stpを欠損させると、酸性条件下で増殖、ヒト細胞と一緒に培養、もしくはマウスの膿瘍から採取した黄色ブドウ球菌で生残性と抗生物質耐性が高まった。これらの知見は、黄色ブドウ球菌の生残性に関与する因子としてセリン・スレオニンリン酸化を介したシグナル伝達を同定し、慢性感染症と闘うための標的候補を提示するものである。-AMV

要約

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によって感染症が引き起こされた場合は、原因菌が抗生物質耐性菌でなくても、慢性的で治療困難であることが多い。これは、ほとんどの抗生物質が代謝的に活性な細胞のみに作用するからだ。生残細胞の亜集団は、代謝的に静止した状態、すなわち、増殖が遅くなり、タンパク質合成が抑制され、抗生物質に対する耐性が高まった状態にある。真核生物でみられるものに類似したセリン・スレオニンキナーゼおよびホスファターゼによって、代謝やストレスシグナル伝達などのきわめて重要な細菌細胞過程が微調整されている可能性がある。われわれは、宿主組織内で黄色ブドウ球菌が経験する酸性ストレスを模倣した条件下で、増殖が遅くなり、セリン・スレオニンリン酸化プロテオームが全体的に変化し、セリン・スレオニンプロテインキナーゼB(PknB)の活性化ループのスレオニンリン酸化が増加することを明らかにした。黄色ブドウ球菌で唯一の注釈づけされた機能性セリン・スレオニンホスファターゼをコードするstpを欠損させると、酸性条件、ヒト細胞内環境、マウス膿瘍などの多様なストレス曝露下で、増殖の遅延と表現型の不均一性が増大した。このような増殖の遅延は、タンパク質翻訳量の低下、細胞内ATP濃度の低下、抗生物質耐性の増大と関連した。リン酸化ペプチド濃縮と質量分析に基づくプロテオミクスを用いて、われわれは、細菌の増殖と代謝を調節している可能性のあるセリン・スレオニンリン酸化の標的を同定した。まとめると、これらの知見は、細菌の静止状態と抗生物質耐性の調節におけるリン酸化調節の重要性を浮き彫りにし、PknBまたはStpを標的にすることによって黄色ブドウ球菌感染症時の生残菌の生成を防止するための未来の治療戦略がもたらされる可能性があることを示唆するものである。

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